研究課題
モデル動物とヒト疾患患者を対象にした解析から、2021年度は下記の成果が得られた。子宮内発育不全で出生した男児・男性は、尿道下裂などの外性器異常を示す割合が高いことが知られている。子宮内低栄養状態が精巣に与える影響を明らかにするため、野生型マウスを用いて胎生期および生後における精巣の形態と機能の変化を解析した。通常食あるいは栄養制限食(妊娠6.5日から栄養摂取量を50%に制限)を与えて子宮内の栄養状態が異なる妊娠マウス2群を用意し、それぞれから得られるオス胎仔と出生したオス個体について解析した。その結果、通常食飼育の妊娠マウスに比べて、栄養制限食の妊娠マウスでは胎仔(胎生17.5日胚、妊娠後期)の体重が減少し、子宮内発育不全を呈した。また、同時期に精巣内男性ホルモン濃度および男性ホルモン産生酵素遺伝子発現量が半減していた。さらに、通常食飼育の妊娠マウスから出生したオスに比べて、栄養制限食の妊娠マウスから出生したオスでは生後6週齢の時点で精巣上体内の精子数が有意に減少していることを見出した。われわれは、子宮内発育不全が外性器異常および不妊症を招く原因であることを明らかにした。さらに、本研究は精巣機能不全がDOHaDスペクトラムに含まれることを示すものである。性分化関連因子であるMAMLD1の機能喪失は患者とモデル動物において生後の精巣容量の減少を招くことが知られている。また、ヒトにおいてMAMLD1の病的バリアントは、出生時に生殖器異常を引き起こす可能性が高く、年齢による精巣機能の低下と関連している可能性がある。われわれは、MAMLD1の病的バリアントと性分化疾患の発症における遺伝子間相互作用の関連、およびMAMLD1の細胞内機能について報告した。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 7件)
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