昨年度の検討において、MTSアッセイにてシスプラチンにて5μM程度の濃度にて70%程度の増殖抑制効果を認めたことから、スタチン+オラパリブの併用療法に、さらにシスプラチンを追加することで、増殖抑制効果が相乗効果として現れるかを、同様にMTSアッセイにて検討したところ、スタチン+オラパリブで増殖抑制効果を元々認めることもあり、スタチン+オラパリブに、更なるシスプラチンの投与を追加しても、ホルモン非依存性前立腺癌PC-3細胞や当教室で樹立したホルモン非依存性LNCaP細胞(LNCaP-LA)において、更なる増殖抑制効果は、明らかには認めなかった。その結果より、スタチン+オラパリブで検討を進めた。PC-3とLNCaP-LAにおいて、BRCA1やBRCA2をsiRNAでノックダウンしオラパリブを投与したところ、control群に比べ更なる細胞増殖効果を認め、スタチンによるDNA修復遺伝子の発現低下が、オラパリブによる細胞増殖抑制効果を増強させている可能性が示唆された。また、当教室で樹立したカバジタキセル耐性22Rv1に対しても、シンバスタチンはBRCA1/BRCA2/FANCAの遺伝子発現を低下させ、オラパリブとの併用で更なる増殖抑制効果を認めた。またDNA ダメージにより二重鎖切断が生じるとヒストンタンパク質の一種であるH2AX がリン酸化されることから、リン酸化H2AX(γH2AX) はDNA損傷のマーカーと使用されるが、PC-3、LNCaP-LA、カバジタキセル耐性22Rv1において、スタチン+オラパリブの併用により、controlやそれぞれ単剤と比較して、γH2AXが増加した。以上より、去勢抵抗性及び抗癌剤抵抗性前立腺癌に対して、PARP阻害剤とスタチンのようなDNA修復遺伝子の発現を低下させる薬剤との併用が、治療選択の1つになりうる可能性が示唆された。
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