研究課題
疫学研究からコーヒーは前立腺癌の進展を抑制することが明らかとなっているが、これまでコーヒーの前立腺癌進展制御機構を明らかにした研究はほとんどない。当研究室ではコーヒー成分のカウェオールとカフェストールというジテルペンが前立腺癌細胞に対する強力な増殖・遊走抑制効果を持つことを発見した。本研究ではこれらジテルペンの去勢抵抗性前立腺癌細胞、タキサン系抗癌剤抵抗性前立腺癌細胞への効果および作用機序を明らかにする。すでに、カウェオールとカフェストールは濃度依存的にヒト前立腺癌細胞株PC-3、DU145、LNCaP、LNCaP-SFの増殖および遊走を抑制し、さらにこれらのジテルペンは相乗効果を有することを確認した。そこで、正常細胞に対する影響(毒性)について明らかにするためにヒト正常腎細胞株HK-2を用いて増殖試験を行った。カウェオールとカフェストールは癌細胞に対しで十分効果のある3μMまでの併用では、HK-2に対する増殖抑制効果は認められず、単剤100μMにおいて有意に増殖抑制が認められた。この結果から、ジテルペン併用において毒性を認めることなく癌細胞に作用する至適濃度(30μM以下)が存在することが明らかとなった。また、ジテルペンが癌細胞においてケモカイン分泌やケモカイン受容体の発現を抑制することが明らかになっている。腎細胞癌では実臨床で免疫チェックポイント阻害薬が承認されていることから、まずPD-L1が発現しているヒト腎癌細胞株ACHNとCaki-1を用いて、ジテルペンがPD-L1へ与える影響を調べたところ、これらジテルペンはいずれの細胞においてもPD-L1の発現を強く抑制していることが明らかとなった。今後は去勢抵抗性タキサン系抗癌剤抵抗性前立腺癌に対し、免疫学的アプローチを含め、その効果を検討する予定である。
2: おおむね順調に進展している
3年間の予定を100%とした場合、80%程度と考えられる。去勢抵抗性前立腺癌に関しては新たなメカニズムを含めほぼ検証が終了、正常細胞への影響に関する実験も終了し、予定されていた実験の中では、大方の実験は順調に進んでいると考えられる。
去勢抵抗性タキサン系抗癌剤抵抗性前立腺癌におけるPD-L1発現への影響を明らかにする。また、カウェオールとカフェストールに化学修飾を行いさらに強力な効果を持つ化合物を作成する。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
Scientific Reports
巻: 12 ページ: 675
10.1038/s41598-020-80302-4.