研究実績の概要 |
1つ目の実験として、複数の、かつ独自の癌関連線維芽細胞CAFsを用いて前立腺癌細胞における癌関連遺伝子発現への影響を検討し、CAFsの特徴付けを試みた。前立腺癌患者より初代培養したCAFs(pcPrF-M5, -M28, -M31)とLNCaP細胞より単離・樹立したアンドロゲン感受性の異なるサブクローン(E9, F10, AIDL細胞)をin vitro共培養した。なお、実験には市販されている正常ヒト前立腺間質細胞PrSCを比較対照細胞として使用した。リアルタイムPCRの結果より、我々のCAFsは全てのサブローンにおける癌遺伝子発現に影響しなかった。一方、M28およびM31は全てのサブクローンにおいて癌抑制遺伝子NKX3-1 mRNA発現を上昇させた。さらにM31は癌抑制遺伝子GSTP1 mRNA発現も上昇させた。つまり、M28, M31はcancer-restraining CAFsである可能性が示された。興味深いことに、M28, M31との共培養により観察されるNKX3-1 mRNA発現上昇はサブクローンの性質に依存しない反応であった。そこで、次の実験として、M28およびM31に特異的なエクソソーム含有miRNAの発現解析を試みた。PrSC, M5, M28, M31が産生するexosomal miRNAの網羅解析(東レ株式会社の受託解析サービス)を施行した結果、PrSCに比較して、M28およびM31に共通して発現が2倍以上に高い27 miRNAs、もしくは半分以下に低い81 miRNAsのうち、NKX3-1遺伝子発現に関連しそうな2つのmiRNAを同定した。
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