研究実績の概要 |
前立腺癌患者より初代培養した癌関連線維芽細胞CAFs(pcPrF-M5, -M28, -M31)の培養上清を用いて、LNCaP細胞と、LNCaP細胞より単離・樹立したアンドロゲン感受性が異なるサブクローン(E9, F10, AIDL細胞)を24時間、培養維持した。なお、実験には市販されている正常ヒト前立腺間質細胞PrSCを比較対照細胞として使用した。リアルタイムPCRの結果より、PrSCおよびM5はLNCaP細胞とE9細胞において癌抑制遺伝子NKX3-1 mRNA発現を上昇させた(LNCaP細胞>E9細胞)。そこで、令和2年度に実施した、線維芽細胞由来exosomal miRNAの網羅解析から、M5に比較して、M28およびM31に共通して発現が半分以下に低い81 miRNAsに含まれ、かつNKX3-1遺伝子発現に関連しそうな2つのmiRNA(miR-449C-3pとmiR-3121-3p)の機能解析を施行した。両miRNAのmimicsをLNCaP細胞と3つのサブクローンそれぞれに遺伝子導入した結果、miR-3121-3p のmimicはLNCaP細胞においてNKX3-1遺伝子発現を有意に増加させた。 NKX3-1遺伝子発現を増加させる手法として、プロモーターを標的とした低分子二重鎖RNAが転写/エピジェネティックレベルで標的遺伝子の発現を誘導するRNA activation (RNAa)が報告されている (Ren et al., Prostate, 2013)。我々も検証実験を試みたものの、miR-3121-3p のmimicのようにNKX3-1遺伝子発現を増加させる結果は得られなかった。よって、我々が同定した線維芽細胞が産生・分泌するエクソソーム内包miR-3121-3pは、前立腺癌細胞におけるNKX3-1遺伝子発現を増加させる鍵分子の1つである可能性を示唆するに至った。
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