研究課題/領域番号 |
19K09692
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
猪口 淳一 九州大学, 大学病院, 講師 (10403924)
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研究分担者 |
村田 正治 九州大学, 先端医療イノベーションセンター, 特任教授 (30304744)
姜 貞勲 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (50423512)
今田 憲二郎 九州大学, 医学研究院, 助教 (80735001) [辞退]
河野 喬仁 九州大学, 先端医療イノベーションセンター, 特任助教 (90526831)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 尿路上皮癌 / 膀胱癌 / 上部尿路癌 / 腎盂尿管癌 / 尿中バイオマーカー / スクリーニング / PKCα |
研究実績の概要 |
尿路上皮癌は尿路上皮から発生する悪性腫瘍で、有用な血液腫瘍マーカーがない一方、尿路に発生するため尿を用いた癌のスクリーニング検査法の開発が行われてきた。しかしながら、その多くは偽陽性が多いこと、特に低異型度癌では感度が低いことが問題であり、特異度が非常に高い尿細胞診以外は実臨床においてあまり利用されていない。そこで、本研究では癌化の初期段階から発現が亢進するリン酸化酵素であるプロテインキナーゼCα(PKCα)に注目し、感度、特異度が高く、かつ簡便な尿路上皮癌に対する検査法の開発を目的とした。 まず、我々がすでに開発している活性型PKCαを検出しうる基質ペプチドを用いて、臨床検体(尿)での活性型PKCαを質量分析法にて検出した。その結果、尿路上皮癌症例で86%と高い検出率を示した一方で、前立腺癌症例で9%、腎細胞癌症例で15%と検出率は低く、尿路上皮癌以外ではバイオマーカーとしての有用性は低いと考えられた。また、対照群症例の解析により、特に膿尿が存在すると検出感度が低下することが示唆された。 バイオマーカーとしての有用性検討の一方で、これまでに開発した基質ペプチドを用いた質量分析法による解析はコストがかかるため、より安価な検出法として抗活性型PKCα抗体を作成し抗体反応を利用した検出方法開発に取り組んだ。これまでに、PKCαの活性化に伴い自己リン酸化される部位を抗原として、ウサギを用いてポリクローナル抗体を作成した。しかしながら、非特異的反応が多く更なる開発は困難と考え、現在ニワトリを用いて再度抗体を作成中である。また、前述のように、膿尿が存在すると偽陽性が増加する傾向がみられたため、膿尿に反応しない基質ペプチドの開発を同時に進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①尿中活性型PKCαの癌バイオマーカーとしての有用性検討 尿中活性型PKCαの検出は、質量分析装置による解析でリン酸化率2%をカットオフとすると尿路上皮癌症例で86.2%(25/29)と高い検出率を示した。一方で、前立腺癌症例では9.1% (3/33)、腎細胞癌症例では15.0% (3/20)と検出率は低く、これらの癌腫においてはバイオマーカーとしての有用性は低いと考えられた。また、副腎腫瘍などの良性疾患の場合でも28.6% (2/7)で陽性となっていた。それぞれの症例の詳細な解析により、特に膿尿が存在すると偽陽性が増加することが示唆された。
②尿路上皮癌に特異的で簡便な検査法の開発 基質ペプチド(アミノ酸配列:FKKQGSFAKKK)を用いた質量分析法による解析はコストがかかるため、より安価な検出法として抗活性型PKCα抗体を作成し抗体反応を利用した検査方法開発を進めた。PKCαの活性化に伴い自己リン酸化される部位を抗原として、ウサギを用いてポリクローナル抗体を作成した。しかしながら、非特異的反応が多く更なる開発は困難と考え、現在ニワトリを用いて再度抗体を作成中である。 また、①に記載したように、膿尿が存在すると偽陽性が増加する傾向がみられた。そのため、膿尿に反応しない基質ペプチドの開発を進めている。現在、新たな基質ペプチド候補の反応性確認を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
①尿中活性型PKCαの癌バイオマーカーとしての有用性検討 これまでの研究結果からは、尿路上皮癌以外の癌腫における尿中活性型PKCαの検出率は低く、尿中バイオマーカーとしては有用性が低いと考えられる。むしろ、尿路上皮癌を特異的に検出できる処理法、検出法、カットオフの設定が重要となるため、尿路上皮癌以外の癌腫に関する有用性検討は終了とし、尿路上皮癌症例に対する検討に注力する。
②尿路上皮癌に特異的で簡便な検査法の開発 現在、PKCαの活性化に伴い自己リン酸化される部位を抗原としてニワトリを用いてポリクローナル抗体を作成中である。抗体を精製した後、反応性を確認する。同時に、膿尿に対する偽陽性反応が抑制できるか検討を行う。抗体が十分に機能することが確認できた場合には、さらに感度をあげるためモノクローナル抗体を作成検討する。 一方で、現在の質量分析法による解析法についても改良を検討する。一つは、膿尿に反応しない基質ペプチドの開発で、実際に臨床サンプルを用いてその感度を検討する。また、これまでの検討にて実際の蛋白量が少ないことが検出感度を下げている可能性があるため、前処理法を修正して感度が改善できるか検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に研究に関わる物品を購入予定です
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