研究課題/領域番号 |
19K09697
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
柴田 泰宏 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (10534745)
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研究分担者 |
鵜川 眞也 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (20326135)
窪田 泰江 名古屋市立大学, 大学院看護学研究科, 教授 (00381830)
太田 裕也 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 臨床研究医 (20814255)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 過活動膀胱 / OAB / 機械刺激受容体 / 酸感受性イオンチャネル |
研究実績の概要 |
高齢化が加速する昨今、過活動膀胱を初めとする膀胱機能障害は患者のADLやQOLを単純に低下させるだけでは無く、死亡率にも影響を与えることが明らかになって来ている。健康寿命を延ばすためにも、膀胱機能障害を深く理解することは重要であり、現在の治療薬で効果が不十分な症例のために、今後新規治療薬の開発が求められている。しかし、尿意を受容する機構についての全体像は未解明の部分が多い。私たちはこれまでに機械刺激受容体候補遺伝子であるASIC(Acid Sensing Ion Channel、酸感受性イオンチャネル)ファミリーを中心に解析を行ってきた。そのなかにおいて、ASIC4遺伝子が膀胱平滑筋層に発現していること、および、アフリカツメガエル卵母細胞をもちいた発現系において機械刺激の一種である浸透圧変化によってASIC4を介したイオン電流の流入が増減することを見いだした。このことからASIC4が膀胱における機械刺激受容に何らかの役割を果たしていることが推察される。 本研究においてはこれまでに作成したAISCノックアウトマウスおよびASICノックインマウスを用いて、形態学的、生化学的、生理学的解析手法を組み合わせ、ASICファミリーが機械刺激受容を介して膀胱伸展刺激受容に関与している可能性を検討する。ASICファミリーの中でも特にASIC4を主なターゲットとした膀胱の機械刺激受容機構、尿意発生機構の解明を目指すとともに、膀胱の感覚入力そのものを標的とした過活動膀胱治療に対する新規の治療戦略へとつなげることを目標とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、酸感受性イオンチャネル(ASIC)遺伝子ファミリーのサブユニットがマウスの膀胱で機械刺激受容機能に関与している可能性を包括的に探るため、遺伝子改変動物を用いた形態学的解析および電気生理学実験などによる機能解析を計画している。 本年度において、電気生理学的解析手法のうちパッチクランプの手技習得のため、イギリスのサセックス大学へ留学を行った。留学に伴う実験計画最適化のため、前年度までに作成し居たノックイン動物を用いた形態学的解析は一時中断となった。また、終盤に賭けて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)発生のため、予定よりも留学を短期に収める必要があったり、人との接触、物の移動、動物実験の制限など様々な制約が発生したため、当初予想の進度よりも若干の遅れが生じることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに作出したβガラクトシダーゼレポーターマウスおよびノックインタグペプチド融合ASIC4ノックインマウスの解析を更に進め、膀胱筋層におけるASIC4の詳細な分布を明らかにする事で機能解析の足がか りとすることを目標とする。同時に、c-kitなど腸管の筋層間神経叢に見られる分子との2重染色を試みる。また、ASIC4について、アフリカツメガエルの卵母細胞 を用いた発現系を使った2電極膜電位固定法による電気生理学的解析を行ったところ、浸透圧変化が電流に影響をあたえる可能性が示唆された。これはASICファ ミリーが物理的な刺激に応答する可能性を示唆するものであり、今後さらなる解析を行っていく予定である。現在までのところASIC4-LacZレポーターマウスおよびASIC4-タグペプチドノックインマウスのいずれも尿路上皮における陽性シグナルは得られていない。しかし、核酸レベルでは尿路上皮にAISCファミリーが発現 しているとする報告が見られる。尿路上皮におけるASIC発現の有無は炎症における低pHによる上皮の動態にとって重要であると考えられることから、電気生理学 的解析により尿路上皮におけるASICの発現を傍証するため、前項のとおり、パッチクランプ手技習得に努めた。現在本研究室内において測定が可能となるようにシステムを構築中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
他の研究費を使用する研究と本研究の間で共通使用する物品が発生した。この物品に関して経費を削減した結果、予定していた金額と若干のずれが生じた。また、本研究内容を推進するために解析技術を習得するため海外への留学を行った。その際に本研究費において行うべき実験等を次年度に繰り越す必要が生じた。以上より、次年度への繰越金が生じた。使用計画としては、次年度へ繰り越すことになった実験内容へそのまま転用するため、研究内容に大きな変更は無い。
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