研究課題/領域番号 |
19K09704
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
加藤 智幸 山形大学, 医学部, 准教授 (40396560)
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研究分担者 |
武田 裕司 山形大学, 医学部, 准教授 (90302299)
内藤 整 山形大学, 医学部, 助教 (00431643)
黒田 悠太 山形大学, 医学部, その他 (00594326) [辞退]
土谷 順彦 山形大学, 医学部, 教授 (70282176)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 好中球 / 単球 / GPI-80 / 腎細胞癌 / 尿路上皮癌 / 免疫チェックポイント阻害薬 / MDSC |
研究実績の概要 |
本年度は、全身療法施行中の転移性腎細胞癌患者35例および転移性尿路上皮癌患者22例、計57名から末梢血を採取し、フローサイトメトリーによる末梢血中白血球におけるGPI-80の陽性率・平均蛍光強度(MFI, mean of fluorescence intensity) ・変動係数(CV, coefficient of variation)を含む免疫パラメータにつき解析を行った。 その結果、全身療法施行前の末梢血中好中球様細胞上のGPI-80CVが転移性尿路上皮癌患者に比べて転移性腎細胞癌患者において有意に上昇していた。これは転移性腎細胞癌患者において、末梢血中に好中球様MDSCが誘導されていることが考えられる。一方で、末梢血単球上のGPI-80MFIは両者の間に有意な差は認められなかった。すなわち、両者の間で末梢血中単球様MDSCの誘導には差がないことが考えられた。この結果より癌腫ごとに引き起こされる癌炎症の質と生体の免疫反応に相違があることが示唆された。 また、転移性腎細胞癌患者と転移性尿路上皮癌患者に対する免疫チェックポイント阻害薬の他に、分子標的薬投与前後の免疫パラメータの変化についても治療法別に検討を行った。その結果、抗PD-1抗体のニボルマブと抗CTLA-4抗体のイピリムマブ併用療法を行った転移性腎細胞癌患者においては統計学的な有意差を認めないものの、免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブ単独投与や分子標的薬であるカボザンチニブ単独投与を行った場合よりも、CD16陽性細胞におけるGPI-80CVが低下する強い傾向が認められた。GPI-80CV値の上昇は好中球の多様性増加と好中球様MDSCの存在を示していることから、イピリムマブがリンパ球の活性化のみでなく、末梢血中MDSCを減少させる方向に働いていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始からの2年間で計57名の患者から検体を採取し、免疫チェックポイント阻害薬に加えて分子標的薬による治療開始前後の末梢血中免疫パラメータの解析を行い、癌腫ごとの免疫パラメータの相違や治療効果予測因子となりうる免疫パラメータの候補につき検討することができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在、これまでの結果について学会発表すべく準備を進めている。また、上述の結果と治療法別のパラメータの変動の有無、相違、抗腫瘍効果との相関性を確認した結果について検討を勧めており、学術雑誌に投稿準備中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はコロナ感染拡大により、多くの学会が中止、延期となった。また、開催された学会もオンラインでの参加、発表となったため旅費の支出が大幅に減少した。 また、本研究ではマーカーとなりうる分子の候補を特定した後にRNA-seqを行う予定である。RNA-seqには高額の費用がかかるため、十分な予備検討を実施後に、RNA-seqの費用に充てる予定である。本年度は、予備検討のみを行い、RNA-seqの測定をひかえたため、次年度使用額が生じた。次年度は、マーカー候補分子について解析可能なRNA回収ができた検体についてRNA-seqを実施する予定である。
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