本研究は去勢抵抗性前立腺癌における前立腺癌細胞の活性化機構を、特に転移促進機構に着目して明らかにする研究である。アンドロゲン受容体(androgen receptor: AR)をノックダウンしたC4-2B・LNCaPであるsiAR-C4-2B(negative control: NC-C4-2B)とsiAR-LNCaP(negative control: NC-LNCaP)を用いて、ARのコントロール下にある、ケモカインCCL2を制御するmicro RNAをRNA microarrayによって抽出し、候補としてmiR-124、miR-506を拾い上げた。RT-PCRでsiAR-C4-2B、siAR-LNCaPでは確かにmiR-124、miR-506の発現がNC-C4-2B、NC-LNCaPと比較し低下することを確認し、さらにC4-2BとLNCaP へのDHTの添加により、miR-124、miR-50の発現が亢進することも確認した。逆にC4-2BとLNCaP へのDHTの添加によってCCL2の発現が低下することも確認した。またC4-2BとLNCaP はmiR-124、miR-506のインヒビターによってCCL2の発現が亢進する傾向も確認した。さらに、miR-124、miR-506のインヒビターはC4-2Bの遊走能を亢進させた。 以上のことからARシグナルを遮断することで、ケモカインCCL2を抑制しているmiR-124およびmiR-506の発現が低下し、CCL2の発現・分泌が亢進、CCL2の自己分泌作用によって前立腺癌細胞の遊走能が亢進することが示唆された。
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