研究課題/領域番号 |
19K09713
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
酒井 英樹 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (40235122)
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研究分担者 |
宮田 康好 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (60380888)
大山 要 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 准教授 (50437860)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / 去勢抵抗性前立腺癌 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、前立腺癌のアンドロゲン依存性喪失に伴い生じる癌細胞と癌周囲微小環境の変化を、イムノコンプレキソーム解析法を用いて解析し、去勢抵抗性前立腺癌の病勢をより反映するバイオマーカーを確立することであり、併せて去勢抵抗性前立腺癌に対する新たな治療戦略の構築に関する議論に有益な情報を提供することである。 ヒトES細胞およびヒト胚性生殖細胞の細胞表面上に発現する糖鎖Stage-specific embryonic antigen (SSEA)-4の去勢抵抗性前立腺癌における病理学的役割を検討した。前立腺癌細胞LNCaP、PC3、DU145およびLNCaPから樹立されたアンドロゲン非依存性前立腺癌細胞AICaP1とAICaP2を用いてSSEA-4の発現と細胞増殖、遊走、浸潤との関連を調べ、ヒト去勢抵抗性前立腺癌組織におけるSSEA-4発現とアンドロゲン受容体(AR)発現との関連も併せて検討した。 SSEA-4はAR陰性細胞(PC3、DU145、AICaP1)に発現し、AR陽性細胞(LNCaP、AICaP2)では発現が認められなかった。AICaP1におけるSSEA-4発現はAR cDNAのトランスフェクションで変化がみられなかった。去勢抵抗性前立腺癌におけるSSEA-4発現は去勢感受性前立腺癌に比べ有意に高かった。また、去勢抵抗性前立腺癌ではSSEA-4発現とAR発現は負の相関を示したが、去勢感受性前立腺癌では相関はみられなかった。SSEA-4は去勢抵抗性前立腺癌で過剰発現し、その発現の変化にAR発現およびアンドロゲン除去の関与が示唆され、SSEA-4は去勢抵抗性前立腺癌の新しいバイオマーカーになり得ると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に計画していた、前立腺癌自然発生マウスモデル(KIMAP)における週齢別の血液採取ならびに組織採取が現在進行中であり、今年度はKIMAP の去勢抵抗性前立腺癌を用いた検討を行うためにマウスの去勢を行った。また、種々の検体を用いてイムノコンプレキソーム解析を行うために、至適条件の設定を行っている。一方、その間にSSEA-4が去勢抵抗性前立腺癌の新しいバイオマーカーになり得ることを示唆する結果が得られている。よって、総合的に「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
種々の検体を用いたイムノコンプレキソーム解析法の精度を上げ、再現性の高い測定方法を確立するために、測定条件を綿密に検討する。また、去勢抵抗性前立腺癌の患者血液から癌特異的因子を同定し、その臨床病理学的意義の検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
少額の物品費へ充当する。
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