研究課題/領域番号 |
19K09714
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
森 健一 大分大学, 医学部, 客員研究員 (00579013)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 非細菌性前立腺炎 / NLRP3インフラマソーム / IL1β |
研究実績の概要 |
本研究は前立腺組織における炎症の病態をインフラマゾームの観点から解析し、前立腺の炎症に起因する前立腺肥大症に対しての新規治療法開発のための研究基盤を確立することを目的としている。当該年度は、非細菌性前立腺炎モデルとして用いたホルマリン誘発性前立腺炎ラットとコントロール群を、代謝ケージおよびシストメトリーによる尿流動態学的な検討を用いることによりホルマリン誘発性前立腺炎ラットにおける膀胱機能の低下、つまり一回排尿量の低下および排尿回数の増加を確認することができた。さらに、ホルマリン誘発性前立腺炎ラットとコントロール群における前立腺組織における分子生物学的な比較検討を行い、ホルマリン誘発性前立腺炎ラット群においては前立腺組織における有意な炎症細胞の増加、NLRP3インフラマソームおよび炎症性サイトカインである IL1βのmRNA の発現増加を確認することができた。つまり、ホルマリン誘発性前立腺炎ラット群では、前立腺組織の炎症誘発に伴い膀胱機能が低下するという結果を得ることができた。 さらに、ホルマリン誘発性前立腺炎ラットでは、コントロール群と比較し前立腺重量が有意に増大していた。この原因を解明するため、マッソン染色による比較検討を追加したところ、ホルマリン誘発性前立腺炎ラット群ではコントロール群に比較し前立腺組織内、特に前立腺間質でのコラーゲン線維の増加がみられ、これが前立腺重量増加の原因の一つであることを確認することができた。ヒトにおいても前立腺重量増加、つまり前立腺肥大は、前立腺間質の線維化が原因の一つと言われており、ホルマリン誘発性前立腺炎ラットは前立腺肥大症のモデルとしても妥当であると判断する結果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ホルマリン誘発性前立腺炎ラットではコントロール群と比較して膀胱機能の低下を認め、それに伴う組織学的変化の違いをインフラマゾームの観点から検討することができた。そのため、今後の研究に繋がる結果となり、この点からおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
NLRP3インフラマソームが非細菌性前立前立腺炎のメディエーターとして関連しており、これに伴い膀胱機能が低下することを確認することができた。今後はこの研究成果をさらに詳しく解析し、NLRP3インフラマソーム阻害薬の治療効果についても検討し、新たに非細菌性前立腺炎の治療薬開発につなげたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度予定していた研究経過より早く成果が出たため、動物や試薬等にかかる費用が予定していた金額より少なくすることができたため。
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