研究実績の概要 |
本研究は前立腺組織における炎症の病態をインフラマゾームの観点から解析し、前立腺の炎症に起因する前立腺肥大症に対しての新規治療法開発のための研究基盤を確立することを目的としている。前年度までの研究において、①ホルマリン誘発性前立腺炎ラットにおいては前立腺組織内における炎症細胞、NLRP3インフラマソームおよびIL-1βmRNAの発現増加に伴い膀胱機能障害(一回排尿量の低下および排尿回数の増加)を呈することを確認した。この結果をもとに、②NLRP3 阻害薬であるセルニチンポーレンエキスを経口投与したホルマリン誘発性前立腺炎モデル(投与群)では非投与群と比較し1回排尿量が有意に増加し頻尿の改善を認め、分子生物学的な検討においてもNLRP3, IL-1βmRNAの発現低下を確認することができた。セルニチンポーレンエキスはセルニチンT-60とセルニチンGBXより構成されるが、それぞれ前立腺組織内の炎症に対してどのように作用するのか解っていない。そこで本年度はセルニチンT-60とセルニチンGBXに分けて非細菌性前立腺炎モデルに投与し、それぞれの薬剤効果について検討した。セルニチンGBXはセルニチンT-60に比較し前立腺組織内のIL1-βmRNA、IL-6mRNA、NLRP3mRNAの発現を有意に低下させた。そこで、セルニチンGBXを液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS)にて解析を行ったところ、主にOEA (Oleoylthanolaide)、9-HOTrE (9-hydroxy-10E,12Z,15Z-octadecatrienoic acid) 、13-HOTrE (13-hydroxy-9Z,11E,15Z-octadecatrienoic acid)の3主成分が検出された。今後はこの各成分での効果検討を行い、炎症誘発性前立腺肥大症の治療薬開発の研究をさらに進めたい。
|