研究課題/領域番号 |
19K09715
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
中川 昌之 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (90164144)
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研究分担者 |
大迫 洋一 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (60793354)
榎田 英樹 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (80347103)
吉野 裕史 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (90642611)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 膀胱癌 / PHGDH |
研究実績の概要 |
進行性尿路上皮癌の予後は不良であり、再発・転移症例に対してGemcitabine + Cisplatin (GC)療法が1stライン治療であるが、治療反応が乏しい症例や治療後に再発をきたす症例も少なからず存在する。これらの症例に対して、有効な2ndラインの治療法は確立されていない。進行性尿路上皮癌や治療抵抗尿路上皮癌の新規治療法の開発には、これら癌細胞で活性化している分子経路を明らかにして、その経路を遮断する戦略が必要である。D-3-ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(PHGDH)は解糖系上にある3-ホスホグリセリン酸を変換しセリン合成へ代謝を誘導する酵素である。癌は急速で持続的かつ制御不能な増殖を維持するためにセリン合成が必要である。本研究では膀胱癌におけるPHGDHの発現やこれを標的とする治療的意義の検討を行った。TCGAを用いて、膀胱癌におけるPHGDHの臨床的意義を解析した。また、膀胱癌細胞株におけるPHGDH阻害剤やsi-RNAによるPHGDH抑制時の効果をin vivo/in vitroで評価した。更に、Gemcitabine and Cicplatin(GC療法)投与下でのPHGDH阻害剤の併用効果の有無を確認した。また、PHGDHのメチル化による制御機構に関して評価した。PHGDH高発現群(n=157)は低発現群(n=247)に比べ予後が悪く、また多変量解析においてPHGDHは独立した予後不良因子であった。PHGDHをノックダウンすると、膀胱癌細胞株の増殖能が有意に抑制され、アポトーシスが誘導された。更に、in vivo増殖アッセイではPHGDH阻害剤とGC療法の併用群が、各々の単剤群と比べて腫瘍抑制の相加相乗効果を示した。また、PHGDHはメチル基供与体(SAM)により発現抑制を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年次計画の予定に沿って順調にプロジェクトをこなしている。
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今後の研究の推進方策 |
さらにマイクロRNAのリストから薬剤耐性に関与する検索を行い、まずはin vitroでの耐性克服の実験を行う予定である。有望な阻害剤が見つかればin vivoで実験を行い、その効果や毒性などを確認する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
薬剤耐性株におけるマイクロRNAシーケンスを中国企業に委託する予定であったが、新型コロナウィルス感染の影響で当該年度の実施が困難になった。感染が収束して現状が回復したら直ちにオーダーする予定である。研究全体の進行には影響しないと思われる。
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