研究実績の概要 |
膀胱線維化(Bladder fibrosis)は神経の異常によって膀胱の収縮が慢性的に妨げられた状態が続くと起こる不可逆的な病態である。平滑筋細胞の萎縮や喪失、膀胱間質内の線維芽細胞から分泌される細胞外マトリックスの過剰な沈着により、膀胱収縮能と膀胱容量が低下し、頻尿や残尿増加をきたしうる病態であり、治療法は確立されていない。我々は最近、MYOCD遺伝子を導入すると、ヒトのfibroblasts(線維芽細胞)を平滑筋細胞に変えられる(ダイレクト・リプログラミング)ことを見出した。本研究ではこの技術を、bladder fibrosisに対する新しい再生医療の樹立につなげるための基礎実験を行う。 今年度はin vitro においてMYOCDを遺伝子導入した線維芽細胞にカルバコールを添加し、顕微鏡にて筋収縮の程度を確認しようと試みたが、正常膀胱平滑筋細胞と遺伝子導入した線維芽細胞ともに、収縮を確認することができず、カルバコールの添加方法や培養の条件についての検討が必要と考えられた。またqRT-PCRを行ったところ、遺伝子導入した線維芽細胞は、遺伝子導入していない線維芽細胞と比較し、平滑筋マーカーであるACTA2,MYH11,TAGLN,DESMINの発現が上昇していた。さらに、ある薬剤Xを添加すると、それらの発現量は増加した。しかしながら正常膀胱平滑筋と比較したところ、平滑筋マーカーの発現量が正常膀胱平滑筋よりも大きく上昇しており、MYOCDの遺伝子導入では平滑筋マーカー遺伝子の発現が過剰であることが示唆された。
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