研究課題/領域番号 |
19K09720
|
研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
福原 浩 杏林大学, 医学部, 教授 (20292948)
|
研究分担者 |
田口 慧 杏林大学, 医学部, 助教 (40625737) [辞退]
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 遺伝子治療 / ヘルペスウイルス / 疼痛 / TRP受容体 |
研究実績の概要 |
これまでに、間質性膀胱炎に伴う膀胱痛や知覚過敏にTRP(transient receptor potential)チャネル(特にTRPA1とTRPM2)が関与することを示した。また、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)に効率よく遺伝子導入できる独自の技術を有しており、前立腺癌の遺伝子治療にも既に臨床応用を行っている。そこで、この技術を生かしてTRP受容体を発現する新規HSV-1を作製し、間質性膀胱炎に対する極めて新規性の高い治療法を開発することを着想した。具体的には、①HSV-1が逆 行性に神経軸索から後根神経節まで到達して潜伏感染し、そこで非機能性のTRP受容体遺伝子を発現させることにより、②膀胱の支配神経領域でTRP受容体を持続的に抑制することをモデルで検証する。 前年度までに、独自のT-BACシステムを利用した「鎮痛遺伝子発現型ウイルスの作製システム」を使用して、新規ウイルスの作製に成功していた。CMVプロモータ下にTRP遺伝子を短時間に強く発現するウイルス、および、LAT(latent)プロモータ下に上記の遺伝子を潜伏感染状態でも発現し続けるウイルス、それぞれの非機能性ウイルスも作製することに成功していた。 本年度は、昨年度から着手している、炎症性膀胱痛モデルの検討を引き続き行った。WTマウスの膀胱内にLPSを注入すると24-48時間後に頻尿が誘発され、24時間後までLicking(下腹部舐め行動)と呼ばれる膀胱痛様行動が持続することをの再実験を行った。一方、TRPA1KOマウスの膀胱内にLPSを注入すると、同時期に頻尿は誘発されず、膀胱痛様行動は早期に改善することを再確認した。マウスの足底に新規ウイルスを直接投与した7日後に同部位に疼痛誘発物質であるホルマリンを注射し、逃避行動を示す時間を測定するホルマリンテストも行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ウイルス作製には成功したが、予定された炎症性膀胱痛モデルの検討の再実験が必要であるため。
|
今後の研究の推進方策 |
炎症性膀胱痛モデルにて、炎症性膀胱痛の検討・再実験を引き続き行う。 炎症性膀胱痛モデルとしては、広く一般的に用いられているシクロフォスファミド(CYP)誘発膀胱炎ラットモデルと、Lipopolysaccharide(LPS)誘発性膀胱炎マウスモデルの2つを用いる。さらに、マウスの足底に新規ウイルスを直接投与した7日後に同部位に疼痛誘発物質であるホルマリンを注射し、逃避行動を示す時間を測定するホルマリンテストを施行する。 本年度は、2つの炎症性膀胱痛モデルに対する潜伏型ウイルス治療の効果、また、ホルマリンテストによるウイルスの鎮痛効果の再実験を行う。具体的には、作製した新規ウイルスを膀胱壁内に注入し、潜伏感染後に以下の検証および本年度の再実験を行う。 1.CYP誘発膀胱炎ラットモデルでのウイルス治療の予防効果の検討 2.LPS誘発膀胱炎マウスモデルでのウイルス治療の予防効果の検討 3.ホルマリンテストによるウイルス治療効果の検討
|
次年度使用額が生じた理由 |
炎症性膀胱痛モデルの再実験が必要となり次年度に繰り越す状況になっており、翌年度分と合わせて、再実験を行う。そのための物品費に使用する。
|