Kansl1-L KOマウスの精巣組織での組織学的検索を中心におこない、精子形成がA型精母細胞からB型精母細胞になりその後は減数分裂を開始し、第1分裂期のレプトテン期、ザイゴデン期、パキテン期、ディプロテン期、ディアキネシス期を経て、第二分裂期を経て精子細胞そして成熟した小さく先のとがった精子まで成長する過程の中で、このKansl1-L遺伝子がパキテン期後期まで関わり、最終的に精母細胞のアポトーシスを誘導し精子形成を完全に停止させていたことまで突き止めた。 KOマウスとWildマウスの精巣組織(4W)よりDNA マイクロ解析を行い、老化関連遺伝子群に有意な差を認め、KOマウスではとくにPgc1 α( peroxisome proliferator-activated receptor-γcoactivator 1α)遺伝子発現の著明な低下を認めており、このPgc1αと老化関連遺伝子の一つSirt1遺伝子と精巣特異的なKansl1-L 遺伝子の解析を行ってその関係性を検索した。精子形成のfirst wave(出生後14日から16日までの精巣組織)においてのリアルタイム解析においてsirt1遺伝子の発現低下を認めたが、Pgc1α遺伝子の発現低下を認めず、発現上昇を認めた。またKOマウスのフェノタイプで精子形成不全と加齢とともに雄KOマウスにおいては、雌KOマウスの腎臓組織と比較して、尿細管の拡張と線維化を著名に認めており、雄の腎臓組織におけるsirt1遺伝子の発現は尿細管拡張が著明になる時期4Wに増加し、Pgc1α遺伝子も同様に増加しており、雌の腎臓組織のおける遺伝子発現パターンと異なっていた。このことから精子形成にかかわる遺伝子変化が腎臓組織における尿細管拡張や線維化(腎臓の加齢)に影響を及ぼしていると考えられた。
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