研究課題/領域番号 |
19K09726
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
齋藤 一隆 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (10422495)
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研究分担者 |
中山 貴之 国立研究開発法人国立がん研究センター, 先端医療開発センター, 研究員 (10727225)
北野 滋久 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 医員 (60402682)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 免疫療法 / 炎症 / 腎細胞がん / 免疫チェックポイント阻害剤 / C反応性蛋白 |
研究実績の概要 |
腎細胞がんにおける、炎症が免疫抑制を誘導する機序など、炎症と免疫の関連メカニズムを解明し、抗がん免疫治療の発展に結び付けることを目的として、まず、炎症マーカーが免疫チェックポイント阻害剤を用いた新規免疫療法における治療効果の指標となる有用なバイオマーカーとなることを明らかとするため、以下の研究を行った。 免疫チェックポイント阻害剤にて治療した進行腎細胞がん42例を対象とし、炎症マーカーであるC反応性蛋白(CRP)が、治療開始後早期(4週間)に治療前値よりが2倍以上に上昇した後に治療前値以下に低下した例をflare-responder、治療開始後に前値より30%以上低下した例をresponder、いずれにも当てはまらない例をnon-responderと分類し、免疫チェックポイント阻害剤療法の治療効果との関連を調べた。 結果として、flare-responder、responderの順に、それぞれ38%、13%と良好な腫瘍縮小効果を認めた。一方non-responderでは、腫瘍縮小を認めなかった。また、全奏率(objective response rate)も、flare-responder(73%)、responder(27%)、non-responder (6%)と3群間で有意差を認めた。無増悪生存(pregoressio-free survival)でも、flare-responder、responderの順にnon-responderと比較して良好であった。 以上の結果より、免疫チェックポイント阻害剤療法において、炎症マーカCRPの推移は治療効果と密接に関連し、治療効果の早期評価に有用である可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画のなかで、免疫療法における炎症マーカーの免疫バイオマーカーとしての有用性の検証を主目標の1つとしてる。先に述べたように、新規免疫療法である免疫チェックポイント阻害剤に治療された腎細胞がんにおいて、炎症マーカーCRPが治療効果と密接に関連し、早期評価にも有用であることを示し、CRPが免疫療法における免疫バイオマーカーとなることが示唆された。この成果は、2019年の米国泌尿器科学会で報告し、国際学術誌への投稿を準備している。 また、がん種は異なるものの、免疫チェックポイント阻害剤を用いた尿路上皮癌症例でも、治療開始後の早期CRP反応が予後と密接に関連することを見出し、炎症マーカーが免疫療法の治療効果評価に有用なバイオマーカーとなり得ることを指示する結果を得ている。 以上の点より、本研究の主目標の一つである炎症マーカーの免疫バイオマーカーとしての有用性の検証について、研究はおおむね順調に経過していると評価される。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い、引き続き、腎細胞がんにおける、炎症が免疫抑制を誘導する機序など、炎症と免疫の関連メカニズムを解明し、抗がん免疫治療の発展に結び付けることを目的に研究を進める。 腎細胞がんの腎原発巣での免疫状態がCRPと相関することを報告しているが、腎原発巣および、摘出転移巣の腫瘍組織を免疫組織染色にて、PD-1/L1の発現や、CD4+/8+T細胞、M2マクロファージ、Treg細胞などの浸潤を評価し、宿主の炎症反応状態との関連を評価し、腎細胞がんにおける微小環境の免疫状態と炎症との関連を網羅的に明らかとする。また免疫療法の予後の情報と合わせ、炎症マーカーを用いた免疫指標スコアモデルを構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度では、腎細胞がん患者の免疫状態と全身炎症反応との関連解析、および、炎症による免疫抑制を誘導する機序の解明において、それぞれ実験機材、試薬の購入で支出額が所要額に達せず、次年度使用額が生じた。 次年度で、上記の研究テーマの実験において必要な関連試薬の購入に助成金を使用することを計画している。
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