研究課題/領域番号 |
19K09734
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
湯村 寧 横浜市立大学, 附属市民総合医療センター, 准教授 (30522023)
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研究分担者 |
濱上 知樹 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (30334204)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 人工知能 / 精子 / 顕微受精 / 選別 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
わが国では現在年間13万件以上の顕微受精が行われている。顕微受精の成績は胚培養士が選別する精子の状態に依存する。精子の選別方法、基準については明確なエビデンスはなく胚培養士の経験と知識に大きく依存する。我々は横浜国立大学工学部 濱上らの協力を得て人工知能による精子認識研究を行ってきた。この方法を利用して顕微受精時の精子選別方法に関する胚培養士の知識・経験を人工知能に学習させることで、培養士のいう「良好精子」の物理的特徴を分析し、良好と定義される因子を用いて各精子に格付け(Grading)を行うシステムを作製する。当初の計画通り横浜市大で顕微受精時の映像(動画)をHDDに録画し横浜国立大学 濱上研究室に送付。ラベル付けソフト(開発済)がインストールされたPCにこの映像を取り込み、研究協力施設の胚培養士が映像内の各精子に5段階評価の点数(Grade)をつける(ラベリング)。ラベリングの基準は以下の通り。 A: 率先して顕微授精に用いたい (Grade 5) B: Aの精子がない場合顕微授精に用いたい (Grade 4) C: AやBの精子がない場合のみ用いる (Grade 3) D: 使用して良いか迷うため主治医と相談する (Grade 2) E: まず授精しないと考えられる (Grade 1) 以上となる。ラベル付けされた精子のデータをもとに分担者は機械学習を繰り返し、良好精子の特徴分析を行う。その後、人工知能が学習した良好な精子の特徴から個々の精子にGradeもしくはスコアをつける。 一つの映像に約250個の精子データが含まれるが1データを10名程度の培養士にラベリングさせる。この作業を繰り返し人工知能は自分が分析した健全な精子の特徴から映像内の精子にGradeをつけるようになる。そのGradeの良い精子が顕微受精に適した健全な精子ということになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では概要に記載された精子のラベリングをラベリング用ソフトをインストールしたPCで行う予定であった。すなわち、1)横浜市大で撮影された映像を横浜国大へ送る。2)ラベル付けソフトをインストールしたPCに映像を取り込み培養士へ送る。3)協力施設の胚培養士にそのPCを用いてラベリングを行ってもらう。4)PCを横浜国大へ再度送付しデータの機械学習を行う予定であった。しかし、PCの購入費用、輸送費用などのコストや輸送中にPCが破損する可能性もあり、より効率よくラベリングするシステムとして、ラベリングソフトをクラウドシステム上に設置し映像をにuploadさせる方式に切り替えることとした。 またGradeをつける前段階の予備実験で施設により胚培養士の精子評価方法に差異があることが示唆されたため、ラベル付けの基準を再検討する必要が出てきた。それらの問題を解決するために令和元年度は時間を費やした。
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今後の研究の推進方策 |
計画に遅れは発生したが、クラウドシステム内にラベリングソフトを移したことでPCの購入・輸送コストがなくなった。よってそれらの経費を胚培養士の謝金などに回すことが可能になり、より多くの胚培養士が作業に参加できることになった。またPCは各施設一つしか送れなかったため1施設に複数のラベリングをしてくれる胚培養士がいる場合は全員が作業を終えるまでPCが戻ってこなかったが、システム改善後は各培養士が自分の端末(PCやタブレットなど)を用いてラベリングできるのでラベリングの作業効率も上がった。現在は横浜市大で撮影した精子映像もそのままクラウド上のソフトにuploadできるようになり、インターネット・クラウド上でほとんどの作業が完結できる形となっている。さらにPCを使用せず日本中のどこからでもクラウドサーバーにアクセスすれば作業ができるため短期間で大量のデータを収集することができる。 以上より、研究方針に変更はなく2年目はデータ収集と機械学習を行ってゆく方策とした。 本研究については学会発表や執筆した総説などで興味を持ってくれている胚培養士・医師も非常に多く現在ラベリング作業への参加者を追加で募っているがすでに10名の胚培養士(4施設)から作業の承認を得ている。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述した通り、より効率よくラベリングするシステムとして、ラベリングソフトがインストールされたPCを協力施設へ送るにではなく、ソフトをクラウドシステム上に設置し映像をにuploadさせる方式に切り替えることとした。 その準備のために令和元年度は時間を費やした。 そのため解析ができなかった。しかし現在はクラウドシステムも稼働し解析の効率が上昇、昨年度の解析分も施行可能と考えている。計画としてはそのまま進めてゆく予定である。
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