研究課題/領域番号 |
19K09742
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
松田 公志 関西医科大学, 医学部, 教授 (20192338)
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研究分担者 |
木下 秀文 関西医科大学, 医学部, 准教授 (30324635)
吉田 健志 関西医科大学, 医学部, 非常勤講師 (40572673)
安藤 英由樹 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (70447035)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 追体験 / 追いトレ / ロボット手術 / 腹腔鏡 / トレーニング |
研究実績の概要 |
ロボット支援下腹腔鏡下前立腺全摘をイメージした尿道膀胱吻合についての教材化(追いトレ)を完成させた。尿道膀胱吻合は両端針の吻合糸を用いて行う操作であり、経験の浅い術者では 45-60分程度を要する。熟練者(松田)の内視鏡ステレオ画像を PC に記録し,この出力を遅延のない専用回路によって実作業の内視鏡画像に重ね合わせる重畳画像を作成し、手技に必要な情報を呈示可能とするシステムを構築した。さらに、以前の尿道膀胱吻合モデルでは腹壁の角度、尿道と膀胱の角度など実際の手術とは乖離のあるモデルであった。そこで新たな尿道膀胱吻合モデルを設計し、実際の視野、環境、可動域制限などを再現するために骨盤骨のレプリカモデルを使用、膀胱、尿道においては実際の硬さに近い素材を用いてモデルを作成した。ロボットアームが実際の挿入角度で入るように腹壁の角度も調整できるように再作成し、実際の手術視野の作成に成功した。 これらを用いて、まだダビンチ操縦免許を持たない研修医、泌尿器科専攻医を対象にトレーニング群/非トレーニング群として被験者を設定し、プレリミナリーに比較検証実験を行なった。得られた手術動画についてGEARSスコア(腹腔鏡手術手技を採点するための国際的な評価スコア)を用いて泌尿器科腹腔鏡手術認定医により評価した。その結果、トレーニング群のほうがスコアが高い傾向がみられた。これはダビンチロボット手術トレーニングにおいて追体験型の手法が効果的であったことを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成31年度の終了時点で、当初目標としていたロボット手術動画と実際のロボット操作アームの重畳画像システムを作成することができた。熟練者(松田)の膀胱尿道吻合モデルを用いた膀胱尿道吻合動画を、ロボット操縦席のモニターに3Dで半透明で映し出しながら、ロボットアームを実際に操作し、半透明の画像を追うことで熟練者と同じ動きを習得していく。画像処理の都合、アーム操作と画像の描写が0コンマ数秒単位で遅延する現象の解決に難渋したが、研究分担者、安藤准教授により調整、問題の解決に至った。 さらに、実際の手術環境に近づけるべく、膀胱尿道吻合モデルを作成。以前開発したものは尿道膀胱距離、あるいは腹壁角度やアームの可動域が実際の手術環境と異なっていた。腹壁部カバーの可動性アップ、ピンの抜き差しで角度設定変更可能とした。また、尿道、膀胱位置をmm単位で調整可能としトレーニング環境を整えることができた。また、プレリミナリー比較検証実験を行い、追体験型ロボット重畳システムの構築の有用性について傾向を確認し、さらに被験者を増やして行う予定としている。 当初、熟練者による実際の手術動画を重畳システムのトレーニング用として撮影する案を予定していた。しかし、特許申請も視野に入れたトレーニングシステムの開発であったため、トレーニング画像として一般的に広めることが倫理面の問題をはらんだり、あるいは、動画撮影の対象となった患者の特許権を考慮したりなど解決しがたい問題があるため、現在はトレーニング画像を1症例に特定せずに、症例ごとにトレーニング画像を作成し学習するシステムを上記の安藤准教授を中心に開発を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
すでに検証するための環境は整備されたため、当科初期研修医、後期研修医を被験者とする実験を行う。被験者はダビンチ操縦免許(プロクター)を持たないもの、あるいは取得しているが執刀経験がないものを選考し、ランダムに追いトレ群、通常トレーニング群として割り付けを行う。予定人数は14名とし、追いトレ群においては一定期間を設けて重畳画像を使った訓練を行う。また、非トレーニング群は一般的なトレーニング動画の鑑賞と既存のシミュレーショントレーニングを同じ時間行ってもらう。測定実験においては両群とも、膀胱尿道吻合モデルを用いた縫合演習を行ってもらい、時間、GEARSスコアでの評価を行う。その期間を約半年間とし、その後半年の期間で、計測結果の解析、学会発表、原著論文として公表する準備を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において購入予定であった画像変換処理用パソコンの購入を控えた。理由は研究分担者である大阪大学情報科学研究科 安藤英由樹准教授所有の画像変換処理用ノートパソコンを一時的に借用し、実験の際に試験的に使用することとしたためである。このことにより予算として計上していたノートパソコンの経費について当該年度においては使用することがなかった。今後、借用したノートパソコンのスペック、ソフトを参考にし、自身の研究環境で画像変換処理が必要となるため、専用ノートパソコンの購入を予定している。
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