研究課題
本年度は、嗅覚受容体は多数存在する関係より非常に複雑であり研究対象として難しいと判断し、嗅覚受容体の下流にあるAdenylate cyclase 3(AC3)、Gタンパクolfactory type(GNAL)、味覚受容体の苦味、旨味、甘味受容体の下流にあるTRPM5とgustducinを中心に昨年から引き続き研究を行なった。また、前立腺上皮に存在するセロトニンを発現する神経内分泌細胞も化学感覚機能を有する可能性を有していると考えて、その特徴や微細構造の研究も実施した。まず、マウスの精路を摘出し、精巣、精巣上体initial segment(IS)、頭部、体部、尾部、精管に分けてPCRによるRNAの解析を実施した。まず、AC3は精巣上体のISに軽度の発現を認めたが精路にはほとんど発現の確認ができなかった。GNALは、精巣、精巣上体尾部と精管に発現を認めた。精巣上体の免疫染色では、上皮内腔側の繊毛の先端に発現を確認した。TRPM5は精巣での発現を確認したが、精巣上体や精菅にはほとんど発現を認めなかった。gustducinは精路にほとんど発現を確認できなかった。前立腺上皮のセロトニンを発現する神経内分泌細胞は、尿道近傍の導管に偏って存在し様々な神経系のマーカを発現していたが、前述の嗅覚と味覚(苦味、旨味、甘味)受容体の下流のマーカーは発現を確認できなかった。また、その細胞を電子顕微鏡で観察すると、導管内腔と必ず接しておりその部位には微絨毛を有していた。また、その細胞内には必ず神経が走行していることが観察されたことから、マウスの前立腺に存在する神経内分泌細胞は、化学感覚細胞の性質を有している可能性が示唆された。RNAの定量解析では、マウスの精路にGNALやAC3が微量に存在している可能性が示唆されたが、免疫染色を詳細に実施することによりその局在を明らかにする必要性がある。
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Journal of molecular histology
巻: 52 ページ: 1205-1214
10.1007/s10735-021-10020-2.