研究課題
本研究では包括的高感度転写産物プロファイリング(High Coverage Expression Profiling:HiCEP)法を活用し、かつ次世代シークエンサー(NGS)を組み合わせた新規の高感度解析法(NGS-HiCEP)により、腎細胞癌に特異的な分子を探索することを目的とした。まずHiCEPを用い約5万8千個のピークを得ることができた。そして、NGS-HiCEP法で個々のHiCEPピークの遺伝子を効率的に同定しカタログ化した。腎細胞癌6症例の癌部と肉眼的非癌部の遺伝子発現の違いを比較し、非癌部と比べて癌部において5倍以上発現が増加している12遺伝子を同定することができた。既知の8遺伝子はCA9、SCARB1、EGLN3、ENPP3、ESM1、STC2、SEMA5B、ANGPT2で、腎癌との関連が過去に報告されていた。また他の4つの遺伝子は過去に腎癌との関連が報告されていない新規候補遺伝子であった。この12遺伝子において、別の腎細胞癌症例のサンプルを対象としたリアルタイムPCRによる再現実験を実施し、癌部においてすべての遺伝子の発現増加が確認できた。さらにTCGA(The Cancer Genome Atlas)に登録されているデータを用いて、候補遺伝子の発現量と生命予後との関連について検討を行った。12個の候補遺伝子について、TCGAの淡明型腎細胞癌のRNAシークエンスのデータセットを用いKaplan-Meier解析を行ったところ、発現量と生存について有意な相関を認めたのは、SCARB1 (P = 0.037)とGene C (P = 0.017)の2つであった。本研究においてNGS-HiCEP法が腎癌特異的なバイオマーカーの候補を同定する方法として効率的で優れた手法であることが証明された。
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