研究実績の概要 |
妊産婦・褥婦の医薬品使用のうち、抗うつ薬の処方状況を株式会社JMDCの保有する大規模レセプトデータベースを用いて解析した。東北大学病院のadministrative dataを用いて構築したアルゴリズム(Ishikawa T, Obara T, Nishigori H et al. Pharmacoepidemiol Drug Saf 2018;27:751-62.)と,児の出生年月を組み合わせ,妊娠開始日・出産日を推定した。児と連結が可能であり,妊娠前180日~出産後180日の期間,同一の健康保険組合に在籍した母親33,941名を対象とした。出産日以前に111人(33/10,000人)が双極性感情障害(ICD-10コードF31)、729人(215/10,000人)がうつ病エピソード(同F32),830人(245/10,000人)がその他の不安障害(同F41)であった。妊娠前180日~出産後180日の間に,33,941人中451人(133/10,000人)に1回以上抗うつ薬の処方があった。 妊娠前180日~出産後180日に最も多く処方されていた薬剤は、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI,105/10,000人),続いて三環系抗うつ薬(TCA)/non-TCA(30/10,000人)であった。妊娠前180日に抗うつ薬が処方された339人中151人(44.5%)は妊娠中に抗うつ薬処方を中止した。妊娠前180日~出産後180日の期間に最も多く処方があったSSRIはセルトラリン(145名,43/10,000人)であり,続いてパロキセチンであった。本研究は,日本の大規模administrative databaseを用い,妊婦における抗うつ薬処方状況を評価した初めての研究である。今後は、これらのデータを応用して児の先天奇形発症との関連の解析を進めていく予定である。
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