研究課題
本研究では、主席(大)卵胞でのみで卵子が成熟するという既成概念に挑戦し、非主席(小)卵胞においても卵子が成熟し得ることを示して、小卵胞由来卵子採卵の難治性PCOSを含む不妊症への応用応用を目指している。これまでに、小卵胞より回収した卵子の25%が成熟(MII期)卵子であること、正常胚発生能を有していること、出生児に奇形などの健康リスクが無いことを確認した。また、非主席(小)卵胞の卵子成熟機構として、(1)主席(第)卵胞と同様に顆粒膜にLHCGRが発現しており、LHの下流で細胞シグナルが活性化されて卵子の還元分裂が再開される機序、(2)卵丘が壁顆粒膜から早期に分離された後、顆粒膜細胞からの抑制シグナルが解除されて還元分裂が再開される機序の2つの機序があることを示した。これらの知見を踏まえ、PCOSを含む難治性不妊を対象とする卵胞中期少量FSH 投与(delayed FSH)による小卵胞穿刺IVFを考案し、昨年度から本年度にかけて難治性不妊症患者を対象にその有効性を検討した。その結果、生児獲得率が5.1倍、生児獲得数が0%から40%に上昇(n=25)することを確認した。さらに、PCOS患者に対して非主席(小)卵胞穿刺によるIVF治療を実施し、その有効性を検証した。その結果、小卵胞穿刺により胚盤胞獲得数および胚盤胞当たりの生児獲得数が有意に上昇することを確認した。これらの効果についてAMH値によりPCOSを層別化して評価したところ、月経周期3日目のAMHが30.0ng/ml以上のグループで小卵胞由来胚盤胞の生児獲得率が有意に上昇していることを確認した。以上の成績から、小卵胞穿刺によるPCOS患者に対するIVF治療は、胚盤胞数の増加、胚盤胞の質向上に寄与する可能性が示された。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
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