研究課題
本研究は、腸内細菌叢に着目して多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)発症機序を明らかにし、これをターゲットとしたPCOSに対する治療戦略を開発することを目的とする。PCOS女性に対しては、不妊治療成績ならびに周産期予後の向上のために、挙児努力前からの健康管理、プレコンセプションケアが勧められる。しかしPCOSの発症機序が明らかでないため、生活指導や対症療法以外の有効な方策が打ち出せていない。この研究計画では、胎児期の高アンドロゲン曝露によって成長過程の腸内細菌叢形成に異常が生じ、その結果、代謝・ホルモン環境などの複合的な異常から成る病態であるPCOSが発症するという仮説を明らかにする。2019年度~2020年度にかけて妊娠後期に高アンドロゲン状態に曝露されたマウス(PNAマウス)を用いて出生後の成長過程(離乳期から性成熟期)においてPCOSを発症する時期、腸内細菌叢の変遷を詳細に検討した。表現型の検討で、PNAマウスでは思春期にあたる生後6週から生殖機能異常が、若年成人期にあたる生後12週から代謝異常が明らかとなった。腸内細菌叢解析では、腸内細菌叢の豊富さを示す指標がPNAマウスでは8週(青年期)では高く、12週、16週では低下していた。またPNAマウスとコントロールマウスでは6週、8週で細菌叢が集団として異なっていた。さらに興味深いことに、PNAマウスの腸内細菌叢の構成は、離乳期にあたる4週ですでにコントロール群とは異なっていた。これらの結果をもとに、2020年度後半よりPCOS発症予防を目的として早期の腸内細菌叢に対する介入研究を開始している。
2: おおむね順調に進展している
申請時に記したように、2019、2020年度で観察研究を完了し、2020年度後半から介入研究へと進んでいる。また観察研究の結果に関して現在投稿準備中であり、概ね予定通りの進捗状況である。
現在とりかかっている介入研究を進めて行く。プロバイオティクスの投与開始時期、継続期間をoptimizeし、予防効果を検証する。さらに治療効果の検証も進めて行きたい。
2020年度内に民間助成の外部資金も獲得することができ、そちらからも経費を支出することができたため、本研究費を節約することができたのが一つの理由である。この次年度使用額を2020年度後半より開始している治療介入を検証する際に、当初予定していた細菌叢の16S解析に加えさらに病態形成への関与の詳細な検討を可能とするメタゲノム解析を行うための研究費に充てる予定である。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
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