研究課題
これまでの研究成果から妊娠高血圧症候群(HDP)胎盤(重症例)における胎盤形成不全に関与する経路として、TFEB抑制系を明らかとしてきた。現在、それとは別経路となるAtg4B過剰発現系の検討を行っている。これまでにAtg4B-C74A変異過剰発現系によって絨毛細胞のオートファジーが抑制されることを報告してきたが、今回変異のないWild typeにおいても類似の結果が得られた。さらに、これまでのTFEB抑制系との関連を検討し、これらの経路は相互に干渉しないことが予想されている。つまり、HDP胎盤におけるオートファジー抑制には2つの経路が別途関与しうることが分かった。近年、HDP胎盤の胎盤形成不全の原因として、合胞体ストレスが一つの原因となることが提唱されている。絨毛細胞の合胞体化は他の臓器に認めない特徴的な現象である。今回、セルラインおよびPrimary細胞にAtg4Bを過剰発現させた結果、合胞体化のメカニズムの一部が抑制される(遅延する?)ことが分かった。それに加え、絨毛細胞の合胞体化と共に、絨毛細胞のオートファジー活性そのものが低下していき、それが細胞周期停止と関連する可能性がある。さらに、それをオートファジーが一部制御している。上記結果に類似した報告は、既に別グループから報告されている。一方で、今回は遺伝子導入により、絨毛細胞の本質的オートファジー活性を評価したことから、既報とは逆の解釈に繋がるエビデンスが得られている。本グループは、オートファジー機能解析に特化した技術を有しており、正確なオートファジー機能解析により、HDP胎盤内におこる現象を正しく評価している。昨年度より、その抑制効果を解除し、オートファジー活性化を誘導する薬剤探索を行っており、本年度はその知見を集積し、論文化する予定としている。
2: おおむね順調に進展している
予定した時間軸と大きなずれなく進行できているため。
今後の課題は、昨年度より行っているオートファジー抑制効果を越えるオートファジー活性化剤の効果を検証することである。セルラインおよびPrimary細胞での検討は実行可能である一方、組織培養によるオートファジー評価法の確率は十分とは言えない。今後の課題としては、Ex vivoとしての絨毛組織培養系の確立、およびその培養系を用いて生体内を模倣する”オートファジー抑制に伴う異常蛋白集積”を確立し、上記薬剤の効果を検証することである。この課題をクリアできれば、将来的臨床応用にも繋がる評価法になり得るため、共同研究者らと相談の上、課題を進めていく予定である。
新型コロナウイルス感染拡大に伴い(特に第一波および第二波期)、病院業務の多忙化および実験施設の稼働制限があり、実験が一部進まなかった。さらに、旅費に計上していた金額も学会の中止等により使用することができなかった。そのため、最終年度に繰り越すことになった。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 1件、 査読あり 12件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
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