研究課題
慢性子宮内膜炎患者の着床期子宮内膜を採取し、子宮内膜間質細胞を単離し培養を行った。培養液中へウシラクトフェリンを添加したが、1mg/mlとなると子宮内膜間質から分泌されるTNFαやIL1βの分泌は減少した。また、同様にTNFαやIL1βmRNAの発現が低下した。TNFαを培養液中に1ng/ml添加し人為的に炎症を増強させると、IL1βやIL6の分泌が増加したが、ラクトフェリン1mg/ml添加によりそれらの分泌が抑制された。また、ラクトフェリン添加によりリン酸化AKTならびにNFkBが抑制された。これらの結果からラクトフェリンは、これらの系を通して子宮内膜間質の炎症を抑制することが明らかとなった。本研究は、現在投稿準備中である。これらの研究の結果を踏まえて8人の子宮鏡的および組織学的に慢性子宮内膜炎と診断された患者に600㎎/日のウシラクトフェリンを60日間投与したところ子宮鏡検査においては8人全員の、組織学的検査にて7人の慢性子宮内膜炎の治癒が確認された。また、一症例において子宮鏡検査でストロベリーアスペクトが認められ高度の炎症を呈していたが、ウシラクトフェリン投与により劇的な改善が認められた。これらのことからウシラクトフェリンが慢性子宮内膜炎に有効である可能性が示唆された。2022年9月より奈良県立医科大学産婦人科学講座に主任教授として着任したが、同附属病院では不妊治療が行えないため基礎研究のみを継続している状態である。今年度中に同附属病院でも高度生殖医療を行う予定であり、今後、慢性子宮内膜炎に対する有効性を引き続き検証する予定である。慢性子宮内膜炎の上皮間葉転換、慢性脱落膜炎の妊娠高血圧症候群への影響に関する研究では成果をあげ、これらはすでにpublishした。また、掲載論文に掲示した。
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Journal of Reproductive Immunology
巻: 150 ページ: 103474~103474
10.1016/j.jri.2022.103474
PLOS ONE
巻: 16 ページ: e0249775
10.1371/journal.pone.0249775