研究課題/領域番号 |
19K09754
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
長谷川 ゆり 長崎大学, 病院(医学系), 講師 (70627752)
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研究分担者 |
三浦 清徳 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (00363490)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 全胞状奇胎 / 部分胞状奇胎 / DNA多型解析 / microRNA / 絨毛性疾患 |
研究実績の概要 |
2019年度は計6例の胞状奇胎症例の嚢胞化絨毛、患者血液、配偶者血液を集積した。すべての症例で免疫染色を含む病理学的診断を行った。6例のうち2例で病理学的診断は部分胞状奇胎であったにもかかわらず、DNA多型解析による遺伝学的診断では全胞状奇胎(1例は1精子受精、1例は2精子受精)と診断された。1例は病理学的診断は部分胞状奇胎であったが、DNA多型解析では妊娠産物と診断された。これにより臨床診断や病理学的診断により胞状奇胎と診断された例であっても、胞状奇胎ではない例が存在することが明らかになった。これは、臨床経過観察や妊娠許可に直接関わる重要な発見である。現在、過去の検体を合わせると総検体数は23例である。4例が部分胞状奇胎、19例が全胞状奇胎である。また、その他に病理学的に水腫様流産とされた症例が2例あり、胞状奇胎か否かで診断が困難であったが、DNA多型解析では母体成分と診断され、胞状奇胎を否定することができた。病理学的診断は免疫染色を追加することで精度が増すことが絨毛性疾患取り扱い規約に記載されているが、p57kip2が陽性と判断されても全胞状奇胎である症例は少なくないため、正確な診断のためにはDNA多型解析が有用であることが証明された。水腫様流産は病理学的にも胞状奇胎とは別の病態であるが、妊娠初期に異常妊娠のため子宮内掻爬術を受けた場合は鑑別が困難であることが多い。診断に苦慮するような症例に対しても今後DNA多型解析が有用である可能性が示唆された。今後も同様に検体の蓄積を行い、データベース化を進めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
症例の蓄積は1年間で6例であった。現在まで年間3例程度の症例を集積しており、以前よりも検体の採取が多く、おおむね順調に進展していると考えられる。本年度は病理学的な診断が胞状奇胎か否か診断が困難な例や病理学的には胞状奇胎と診断していたにもかかわらず、妊娠産物(胞状奇胎ではなく、自然流産)と最終的に診断された症例も集積し、DNA多型解析がより重要な診断ツールとなることを確認できた。今後も分子マーカーの同定を行うために多くの症例を蓄積したい。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は以下の研究を行う。 引き続き症例の蓄積を行う。胞状奇胎が疑われるが、病理学的診断が困難であった症例も積極的にDNA多型解析を行う。可能な限りパートナーからの血液採取も行い、全胞状奇胎であった場合に1精子受精か2精子受精かの診断も同時に行う。患者血液は時系列で採取し、治療経過によって臨床的マーカーであるhCGとともにmicroRNAがどのように推移するかを判断する。特に胞状奇胎に対して掻爬術施行後に侵入奇胎や絨毛癌などを発症した症例があった場合には発症した症例と発症しなかった症例についてRNAプロファイリングの違いについて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はDNA多型解析は各検体を採取するごとに行っている。本年度は多型解析に使用する試薬等は実験室のストックから使用しており、本年度は購入していないが、次年度分は購入予定である。本年度実施予定だったmicroRNA定量については組織をRNA laterに保存している。プローブを用いた解析については検体が集積した後に次年度以降行う予定としており、消耗品については使用する際に購入予定としている。そのため、本年度の物品費は請求に上がっていない。また、分担者の支出が0円となっている理由としては新型コロナウイルス感染症の影響により学会への参加が不可となり、研究分担者の旅費が発生しなかったことによる。
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