研究実績の概要 |
令和4年度は全胞状奇胎と部分胞状奇胎を鑑別可能な分子マーカーの同定を行うため、研究を進めた。全胞状奇胎患者血漿11例と部分胞状奇胎患者血漿4例を比較した。結果として、以前より我々が報告しているC19MC (chromosome 19 microRNA cluster)領域のmicroRNAであるmiR-518b, miR-520f, miR520c-3pは部分胞状奇胎と比較し、全胞状奇胎に有意に流入量が多く、C14MC(chromosome 14 microRNA cluster)領域のmicroRNAであるmiR323-3pは全胞状奇胎と比較し、部分胞状奇胎に有意に流入量が多いという結果であった。C19MCは胎盤由来microRNA、C14MC領域は胎児由来microRNAである。絨毛が異常増殖し、胎児は発生しておらず、雄性発生である全胞状奇胎と嚢胞化絨毛とともに胎児を認める部分胞状奇胎を鑑別できるmicroRNAがC19MCとC14MC領域のmicroRNAであったことは発生のメカニズムを解明することも期待できる。また、通常は掻爬後の絨毛を病理学的に診断することでのみ鑑別可能であった全胞状奇胎と部分胞状奇胎を患者血液を用いて可能であることが示唆された。 この結果については、今まで我々が報告してきた「全胞状奇胎と部分胞状奇胎の診断における病理診断とDNA多型解析による乖離」や「正常妊娠と全胞状奇胎とを鑑別可能な分子マーカーとしてのmicroRNAの同定」などの研究成果とともに、2022年11月25日に行われた第40回絨毛性疾患研究会のワークショップ「絨毛性疾患研究の最前線」において報告した。
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