研究課題/領域番号 |
19K09762
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
内田 浩 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (90286534)
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研究分担者 |
丸山 哲夫 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (10209702)
内田 明花 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (60445236)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 着床 |
研究実績の概要 |
出生児の17人に1人が体外受精児である我が国の生殖補助医療において、伸び悩む着床率の改善を目的として、『胚着床における母体側の子宮内膜上皮細胞・間質細胞の機械的破壊によって漏出する細胞内容および(あるいは)破壊された子宮内膜組織の再構築プロセスが、胚の着床に有利に寄与する』という、子宮内膜への機械的刺激が着床率を向上させる機序の仮説証明を本研究の目的としている。 ヒト着床研究における倫理的制約を避け、定量的解析を実施する目的で機能解析には、Ishikawa細胞(高分化型子宮内膜がん細胞株:子宮内膜上皮細胞[EEC; endometrial epithelial cell] モデル)、THEC細胞(不死化子宮内膜間質細胞株:子宮内膜間質細胞[ESC; endometrial stromal cell] モデル)、JAR細胞(ヒト絨毛がん細胞株)spheroid(胚モデル)を用い、着床解析には in vitro 着床アッセイ(Uchida et al. J Biol Chem 2012)を用いて、初年度は下記検討を行った。 EECモデルを機械的に破壊して(ホモジナイズ法あるいはビーズ破砕法)細胞内容液をサンプリングすることには成功し、in vitro 着床モデルを利用して得られた EEC モデル細胞内容液添加による胚接着率、胚伸展面積(胚貫入率を反映した指標)を比較検討した。その結果、一部条件下において有意差をもった胚接着率、胚伸展面積の向上が認められた。ただし、添加細胞内容液添加量の濃度依存的な向上効果は見出せず、至適濃度の存在を疑わせる一方で、ばらつきのある結果とも解釈され、判断を慎重に行っている。 同様の実験モデルにおいて、EECもデル細胞の運動能の比較検討を実施するとともに、破壊細胞から漏出する細胞内容液による効果のキーファクターとしてサイトカインを想定しているため、種々のサイトカイン添加による胚着床率の変化について検討を開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、EECモデル細胞の破砕によって得られる細胞内容液添加により、胚着床率、胚貫入率に有意差をもった変化が得られると想定していたものの、濃度依存的な変化が認められなかったこと、再現性に一部不確定なところが見られたことから、条件設定の再検討に時間を要したため計画遂行にやや遅れを見てめている。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト着床において、胚貫入の際に破砕され再構築されるのは子宮内膜の上皮細胞(EEC)に限らず間質細胞(ESC)にも及ぶため、初年度で実施した細胞内容液添加による胚や子宮内膜細胞の細胞動態の変化を EEC モデルに原的せず、ESCモデルへ拡大し(当初計画案にも盛り込まれているもの)、胚と間質細胞との interaction にも着目する。 さらに、着床は胚ーECC、胚ーESCの二者間反応だけではなく、胚ーECCーESCの三者による複合的協調的生体反応と考えられるため、組み合わせのバリエーションを変化させた相互反応の検討を行う。 また、初年度末に着手している各種サイトカインによる胚着床における子宮内膜細胞の接着、運動、増殖の細胞機能へ及ぼす影響につき検討を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述の通り、当初見込んでいた最初の検討項目において無理のない説明が可能な有意差効果の結果が得られなかったことで、国内学会の発表を見送ったたため、旅費の拠出がなくなった。また、同様に初回検討項目に予定以上の時日を費やしたため、派生継続する検討項目の実施に遅れが出た。そのため、新たな検討項目に使用する試薬、キットなどの消耗品の購入を次年度に見送ったことによる次年度への計画延期によるもの。
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