研究実績の概要 |
申請者らはこれまで手術患者より摘出した子宮の内膜組織を用いて、正所性子宮内膜における月経期から増殖期初期での低酸素環境下で、VEGF産生におけるHIF-1シグナル経路を介した血管新生の制御機構を解明、報告してきた。 一方HIFの活性について”HIF活性化=低酸素”だけでは説明し得ない様々な現象が生体には存在するという事実も明らかとなっており、増殖因子や炎症性サイトカイン・物質による活性調節とのクロストークにより細胞の酸素・エネルギー代謝を調節する因子としてHIF-1は注目されている。 本研究の目的は、この視点を子宮内膜由来の細胞の機能調節に持ち込んで、新たな視点から「子宮内酸素環境-HIF-1-炎症」の相互関係を解析し、それらが子宮内膜由来の上皮細胞、間質細胞の分化・機能に与える影響を検討することである。 2019年度は解析対象となる細胞として、ヒト子宮内膜間質細胞(初代培養)、ヒト子宮内膜間質細胞(不死化細胞)、ヒト子宮内膜上皮細胞(不死化細胞)、 Ishikawa細胞(細胞株)の培養系を樹立し、それらの細胞においてHIF-1,HIF-2の活性化を評価する実験系を確立した。つまり各々を構成するサブユニットHIF-1a, HIF-2a, HIF-1蛋白質の発現をイムノブロット法を用いて評価する実験系を確立した。さらにHIF-1,HIF-2の活性化を遺伝子発現を用いて評価する半定量的なreverse transcriptase-PCR法を用いた実験系を確立してvascular endothelial growth factor(VEGF), glucose transforter 1(GLUT-1), lactate dehydrogenase(LDHA)などの代表的なHIFの標的遺伝子の発現を評価した。
|