研究課題/領域番号 |
19K09777
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
水谷 哲也 福井県立大学, 看護福祉学部, 教授 (90322734)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | YAP / TAZ / 絨毛細胞 / 顆粒膜細胞 |
研究実績の概要 |
Hippo pathwayは、細胞増殖や器官サイズを制御するシグナル伝達系として明らかになっている。Hippo pathwayによるシグナルは、最終的に転写共役因子YAP/TAZの活性を制御することで様々な遺伝子の発現を調節している。 我々は、絨毛細胞由来BeWo細胞やヒト栄養膜幹細胞を用いた解析より、YAP/TAZは細胞性栄養膜(Cytotrophoblast: CT)細胞の維持に必須であり、これらの活性低下が合胞体栄養膜(Syncytiotrophoblast: ST)細胞への分化に重要であることを明らかにしている。そこで正常妊婦のCT細胞においてもYAP/TAZの活性低下がST細胞への分化に重要であるかを明らかにするため、初代培養CT(pCT)細胞を用いて検討した。インフォームドコンセントが得られた正常妊婦胎盤よりpCT細胞を単離し初代培養を行った。pCT細胞は時間経過によりST細胞へと分化することが明らかになっている。そこでpCT細胞に恒常性活性化型YAP(YAP-5SA)を導入しST細胞特異的遺伝子の発現を検討した。その結果、YAP-5SAの導入により多くのST細胞特異的遺伝子の発現が抑制されることから、初代培養系においてもST細胞への分化にはYAP/TAZ活性の低下が重要だと考えられた。 また、卵巣顆粒膜細胞KGN細胞を用いてYAP/TAZノックダウンによるエストロゲン産生に対する影響についても検討した。その結果、cAMP刺激のない状態でもYAP/TAZノックダウンによってエストロゲンの産生が顕著に促進されることが明らかとなった。このように、YAP/TAZの活性が機能的にも重要であることが明らかとなった。 以上の結果から、YAP/TAZは卵巣と胎盤における機能調節に重要な役割を担っていることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通り、卵巣顆粒膜細胞においてYAP/TAZによるステロイドホルモン産生調節について新たな知見を得た。また、胎盤絨毛細胞においてもYAP/TAZが分化の調節に重要性であることを示した。このように、YAP/TAZが胎盤と卵巣機能を調節する新たな共通因子であることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
卵巣と胎盤において、YAP/TAZの重要性を示すことができたが、そのメカニズムは両組織において未だ不明なことが多く残されている。今後、この作用メカニズムの解明をさらに進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は概ね計画通りであったが、消耗品費が予定よりも少なく研究が進められたため、次年度使用が生じた。 ひき続き、本研究の継続のため、人件費や消耗品にあてる予定である。
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