研究課題/領域番号 |
19K09779
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中村 仁美 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (80467571)
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研究分担者 |
木村 正 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (90240845)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 不妊症 / 子宮 / 着床 / 糖鎖 / 子宮内膜 |
研究実績の概要 |
現在の不妊治療の治療効率を向上するためには現在ブラックボックスである受け入れ側の子宮の着床能を前方視的に評価しその周期ごとの治療方針に反映させなければならない。着床現象において糖鎖を含む多くの物質が関わっている事が知られているがこれらの機序はあまりわかっていない。 我々は、子宮内膜環境全体の変化を電気生理学的に評価する事ができないかと考えパラメータの探索を行った。糖鎖の硫酸化およびシアル酸化の変化により、子宮局所の酸化還元電位およびインピーダンス(マウスでは腟インピーダンスも可)測定値が変化し、これらパラメータにより前方視的に子宮の着床能を評価できる事をマウスおよびヒト確認した。Stat3活性を約50%のみ子宮局所で着床期一過性に抑制した着床不全不妊症マウスモデルにおいて糖鎖のシアル酸化については大きな変化を認めなかったが硫酸化が抑制されている事を確認した。そのため着床現象における糖鎖の変化の大きな鍵となるのは硫酸化ではないかと考えるに至った。 糖鎖の硫酸化を促進さえすれば、着床を促進できるのだろうか?と考え、交配後1.5日目マウスに対して実験的に糖鎖を硫酸化するためにある遺伝子Xを子宮内膜にHVJ-E vectorを用いて過剰発現させて検討を行った。交配後6.0日目における着床数を検討したところ実験群において減少傾向にはあったが有意差を認めなかった。しかしながら、組織学的検討において脱落膜化エリアが明らかに小さい事、胚の着床部位において子宮内膜上皮の明らかな変化が認められた。この事から、糖鎖の硫酸化が減少している事が着床不全につながるだけでなく、過剰であっても正常に着床現象を全うする事ができない事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、糖鎖の硫酸化を促進する事により着床に促進的に働くのでは?という仮説の大前提の下にStat3活性を約50%のみ子宮局所で着床期一過性に抑制した着床不全不妊症マウスモデルから、Stat3を中心としてその下流の硫酸転移酵素を中心とした検討を行い、我々の開発した子宮の着床能を前方視的に評価するシステムの診断機器としての機序を解明するだけでなく、将来的な治療の分子標的の検索に応用する方針であった。準備実験で行った検討について、改めて研究協力者のAplin教授との検討とディスカッションにより、硫酸化が過剰である事も着床において不適切である事が判明した。そこで、今年度は糖鎖の硫酸化を過剰にした準備実験の系についてさらなる検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降も引き続き、Aplin教授、Jones先生と連携し、元々予定していたStat3シグナルに関わる系についても検討を行い、どのようにして糖鎖の硫酸化のバランスをとっているのかについて検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度当初に、研究の将来的な目標に関する仮説について、確認する事とし、準備実験として行った検討について検討をしなおした。表現型の評価方法の確立について、今年度は時間と労力を割く事となった。来年度以降、当初予定のStat3シグナルを中心とした検討を行うため、今年度の予算の一部を次年度に使用する必要がある。
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