着床はトロホブラストにおけるL-selectinと子宮内膜の6-sulfo sLexを含む糖鎖リガンドの結合から始まる事、子宮受容能に多くのglycocalyxの関与が知られている。我々は着床に備えて子宮のglycocalyxは硫酸化およびシアル酸化される事、局所の電気生理学的パラメータ測定値によりマウスおよびヒトにおいて子宮の着床能を評価できる事を報告してきた。プロゲステロン値は正常であるにもかかわらず着床不全を呈する、着床期一過性に子宮局所でStat3活性を抑制させたマウスはglycocalyxの硫酸化が阻害される。そこで、glycocalyxの硫酸化を促進する戦略が、着床不全不妊症の治療に応用できないかと考えるに至った。ところが、glycocalyxの硫酸化の閾値はもちろん不明である。硫酸化を促進するはずが、過剰になってしまった場合にどのような作用があるのかを検討した。 マウス着床期子宮で一過性にglycocalyxの硫酸化を促進するために遺伝子導入を行い、着床現象に対する影響を検討した。glycocalyxの硫酸化を促進したマウスでは、着床期開始時期において子宮の着床数に有意差を認めないものの、その後、組織学的検討において胎盤形成が阻害されている事が示唆された。この事から、glycocalyxの硫酸化が阻害されると着床不全が誘導されるだけでなく、過剰であると胎盤形成を障害する事が示唆された。
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