研究課題/領域番号 |
19K09780
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構東広島医療センター(臨床研究部) |
研究代表者 |
占部 智 独立行政法人国立病院機構東広島医療センター(臨床研究部), 診療部, 医師 (10403536)
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研究分担者 |
向下 寿子 (古庄寿子) 広島大学, 医系科学研究科(歯), 助教 (00634461)
宮内 睦美 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (50169265)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 早産 / 歯周病 / プロゲステロン |
研究実績の概要 |
我々は歯周病による慢性炎症性早産に対する黄体ホルモンの早産抑制及びそのメカニズムを検討することを目的として研究を行っている。①ヒト絨毛組織及び卵膜組織(羊膜、絨毛膜、脱落膜)におけるP.g-DNAと歯周組織の状態(歯周病の有無及び歯周組織のP.g-DNA)の相関の有無については現在症例を集積中である。主な歯周病原因菌であるPorphyromonas gingivalis (P.g)には線毛の違いによりTypeⅠ-Ⅴに分類され、2019年度は100例(正期産76例、早産24例)で、母体血中のP.gのType毎の抗体価と歯周病、早産との関連性について検討した。歯周病の重症度と関連があるP.g抗体のTypeはⅡ・Ⅳ・Ⅴで、早産と関連があるP.g抗体のTypeはⅠ・Ⅱ・Ⅳであった。また胎盤にはTypeⅣのみ存在しており早産に特に関連する因子である可能性がある。②ヒト羊膜上皮細胞と羊膜間質細胞の機能解析については、ヒト卵膜から羊膜組織を摘出、羊膜上皮細胞と羊膜間質細胞に細胞分離、初代培養する手法が確立されたため、来年度よりP.g由来LPSによる刺激やP.gによる共培養を行い歯周病と早産との関連性について検討を行っていく予定である。③卵膜における黄体ホルモン(プロゲステロン)製剤の抗炎症作用の検討については、慢性炎症性早産マウスへの黄体ホルモンの投与による子宮平滑筋のオキシトシンン受容体の発現抑制とオキシトシン感受性の低下を認めており今後さらに早産抑制効果の検討をさらに行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)ヒト絨毛組織及び卵膜組織(羊膜、絨毛膜、脱落膜)におけるP.g—DNAと歯周組織の状態(歯周病の有無及び歯周組織のP.g—DNA)の相関の有無については、P.gと歯周病と早産との関連性が示唆された。P.gのTypeや抗体価による影響について検討を行っている。2)羊膜上皮細胞と羊膜間質細胞の機能解析については、細胞の分離培養が確立できたため、今後は当初の計画通りP.g-LPSによる刺激やP.gとの共培養を行い、子宮収縮や頸管熟化を促進させる因子(炎症性サイトカインやCOX-2の発現や、培養液中のPGE2)、膜の脆弱性に関わる因子(matrix metalloproteinase(MMP),progesterone receptor membrane component 1(PGRMC1))の発現や培養液中の濃度を比較、検討していきたい。3)卵膜における黄体ホルモン(プロゲステロン)製剤の抗炎症作用の検討については慢性炎症性マウスで早産抑制効果を確認できたため抗炎症作用について黄体ホルモンによる羊膜上皮細胞と羊膜間質細胞の機能解析やプロゲステロンの膜受容体であるprogesterone receptor membrane component 1(PGRMC1)の発現変化の解析を行うことで歯周病との関連、細胞の機能解析、抗炎症作用の検討をすすめる予定である。初年度の進捗状況としては症例の集積や細胞分離や培養手法などの確立が計画通り行えており概ね順調に経過していると捉えている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の進捗状況に大きな問題はないため研究計画の変更はなく研究を遂行する上での課題も現時点ではないため引き続き計画に沿って研究を遂行していきたい。
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