研究課題/領域番号 |
19K09781
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
松原 圭一 愛媛大学, 医学系研究科, 寄附講座教授 (80263937)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 妊娠高血圧症候群 / 絨毛外栄養膜細胞 / exosome / HMGA1 / western blotting / proteosome / 妊娠高血圧モデルマウス |
研究実績の概要 |
1)2% O2の低酸素環境でHTR8/SV40neo(絨毛外栄養膜細胞:EVTs)を24時間ないし48時間培養し,上清からExoQuick-TC(System Biosciences, LLC, Palo Alto, CA)を用いてexosomeを採取した。Exosome抽出の正確性を評価するために表面抗原蛋白発現(CD9・CD63・CD81・TSG101・GM130・FLOT-1・ICAM・ALIX・EpCAM・ANXAS)についてExo-Check Exosome Antibody Arrayによって測定した結果,TSG101・CD63・CD81の表現量が多く安定していた。 2)低酸素刺激を加えて培養したEVTsから上清中に放出されるexosomeを抽出し,exosome内のHMGA1蛋白発現をwestern blottingによって評価したが検出することができなかった。そこで,DIA-proteosome assayを行ったところ,HMGA1蛋白の発現が増加していた。 3)炎症性サイトカインとして1ng/mL TNF-alphaを上清に添加してEVTs培養を24時間行ったが,flow cytometryによる検討ではexosome内にHMGA1蛋白発現を検出することはできなかった。 4)妊娠高血圧症候群で発現するEVTs外へのHMGA1放出促進の環境をmimicできるdeoxycholic acid(DCA:0.5mM)で刺激しEVTsを24時間刺激することによって EVTs由来exosomeにおけるHMGA1発現増加をwestern blottingによって確認できた。さらに,DIA-proteosome assayを行い,HMGA1発現の有意な増加を認めたが,それ以外に,Golgi membrane protein1,Nucleobindin-1,inter-alpha-trypsin inhibitor heavy chain H2が重要なハブ蛋白として,Principal component分析・Protein-protein interaction ネットワーク解析によって見つけることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成31年度の実験計画では,まず,低酸素・サイトカインあるいはDCA刺激下に培養した絨毛外栄養膜細胞(HTR8/ SV40neo:EVTs)からexosomeを抽出し,exosome内HMGA1発現の量的変化を解析することであった。これらの実験によって妊娠高血圧症候群における着床機に生じるEVTsの浸潤不全がHMGA1と関連性を持つものかどうかについて検討を行う予定であった。炎症性サイトカインとして妊娠高血圧症候群患者(妊娠初期の発症前)血清中に上昇することをすでに我々が報告したTNF-alphaを用いた。TNF-alphaの刺激ではflow cytometryを用いた検出方法によってexosome内にHMGA1を認めることができなかった。また,低酸素(2%O2)刺激では、western blotting法を用いた結果exosome内HMGA1発現を認めることはできなかったが,DIA-proteosome assayによって低酸素刺激によるexosome内HMGA1発現が増加することを確認することができた。さらに,妊娠高血圧症候群において着床期のEVTsからのHMGA1放出をmimicすることのできるdeoxycholic acid(DCA:0.5mM)の刺激によって,westernblottingによるexosome内HMGA1の発現増加を確認でき,さらに,DIA-proteosome assayによってそれが有意な増加であることを確認することができた。さらに,HMGA1以外にも妊娠高血圧症候群の病態形成に関与するハブ蛋白をいくつか見つけることができた。従って,現在のところ順調に実験を進めることができていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度の実験の継続項目 1)妊娠高血圧症候群患者あるいは正常妊婦の妊娠初期におけるexosomeを抽出し,exosome内HMGA1を検出してその発症を予見できるかどうかについて検討する。
平成32年度 エクソソーム結合型HMGA1は免疫細胞を活性化するか? 1)HMGA1による免疫細胞活性化の可能性が報告されているが,着床部位における脱落膜内には樹状細胞・helper T細胞・制御性T細胞などが存在し,受精卵に対する免疫寛容に関与している。無刺激状態のHTR8/SV40neoから抽出したエクソソームにHMGA1 DNAをtransfectし,これをmagnetic cell sortingで抽出した樹状細胞・helper T細胞・制御性T細胞の培養系に加え,細胞表面マーカーの変化(未熟樹状細胞表面マーカーから成熟細胞表面マーカーへの変化など)をflow cytometryを用いて評価する。この際の培養上清中へのIL-12・IFN-γの分泌についてはELISAを用いて測定する。 2)同様にHMGA1 siRNAをtransfectしたエクソソームを樹状細胞・helper T細胞・制御性T細胞の培養系に加え,細胞表面マーカーの変化(成熟樹状細胞表面マーカーから未熟細胞表面マーカーへの変化など)をflow cytometryを用いて評価する。この際の培養上清中へのIL-12・IFN-γの分泌についてはELISAを用いて測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験助手として人件費を計上しており,3月末までの支払い分を本基金より支出する予定になっていた。しかし,3月に入ってコロナウイルス感染などの問題から予定していた時間をフルに作業をすることができなかったため,最終的に8,588円が余剰金として残ることになった。本残額は次年度繰越金として計上し,コロナウイルス感染に伴う学内研究の自粛要請が撤回された後,本研究を再開し,予定通り,実験助手の人件費として計上することとする。
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