研究実績の概要 |
本研究は、我々のこれまでの研究で同定してきた胎児・胎盤特異的miRNAを用いて、胎児機能及び臓器成熟をモニターできる分子マーカーの同定と新たな胎児機能評価法の確立を目的としている。 研究目的の達成のため、最終年度では、①妊娠16週で施行された羊水検査、妊娠38週で施行された選択的帝王切開術の際に採取された羊水を用いて、胎児成熟がモニターできる可能性を有する分子マーカーの同定、②胚培養液を用いた受精胚に対する非侵襲的な機能的良好胚の新たな選択法の構築を行なった。以下、研究成果を記す。 ①各羊水検体からcell-free total RNAを抽出し、RNAシークエンス解析を行い、1,587個のmRNAを検出した。その中で、妊娠16週で発現量が0 TPM(transcripts per million)で妊娠38週で300 TPM以上に発現量が増加したmRNAを胎児臓器の機能成熟を反映するバイオマーカー候補として5種類同定した。その5種類のmRNA(分布場所)は、SFTPC(肺)、SMIM29(脳や皮膚)、NAA10(脂肪や虫垂)、IFITM3P6(副腎や甲状腺、唾液腺)、CALML5(皮膚、唾液腺、食道)であり、分布臓器の機能を反映している可能性がある。 ②胚培養液中からcell-free total RNAを抽出し、妊娠群、非妊娠群の胚培養液中での胎児・胎盤特異的miRNAであるC14MC,C19MCの発現量をRT-qPCRを用いて比較検討した。特に胎盤の機能を反映するC19MCの発現量が非妊娠群の培養液中で優位に発現していることが明らかになった。本研究代表者の継続研究において、今後さらに詳細な解析を行なっていく予定である。 上記結果により、受精胚の段階から胎児。胎盤の機能をモニターできる新たな評価法の確立の可能性を本研究課題によって示すことができた。
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