研究課題/領域番号 |
19K09787
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
久慈 直昭 東京医科大学, 医学部, 教授 (80169987)
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研究分担者 |
笹岡 俊邦 新潟大学, 脳研究所, 教授 (50222005)
阿久津 英憲 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 生殖医療研究部, 部長 (50347225)
山中 紋奈 東京医科大学, 医学部, 助教 (60838689) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マウス / 体外受精 / オクタン酸 / インプリンティング |
研究実績の概要 |
2019年より開始した本研究では、遺伝子組み換えアルブミン濃度(rHA)が1.0%(w/v)では0.1%に比較し、1細胞期より胚盤胞への発生率が82.5%から60%へ低下してしまうことが明らかになった。rHAを含む培養液ではアルブミン濃度が上がると胚発生率が低下する現象はヒト胚でも見られ、rHAが普及しない大きな理由でもある。そこで本年度、移植実験に進む前にこの原因がアルブミン濃度によるものか、OA以外に同じくアルブミンの変性保護剤として添加されているN-Acetyl-Tryptophane(NAT)の影響か、それともアルブミンの加熱滅菌自体による影響かを確認するため、胚培養実験を行った。 方法としては、rHA20-25%液にOA、NATを高濃度加える方法を模索した。情報収集に非常に難渋したが、最終的に溶解液のpHを調整することで、300mM オクタン酸Na溶液、および100mM NAT液を作成することができた。 次にrHAの20%濃度液を作成、これに前述の方法で調整したOA、NAT濃厚液を加えることによりアルブミン1gあたりOA,NATそれぞれ80μmol添加、その後これを60℃10時間、低温加熱滅菌した。常温に平衡した後、このrHA液をKSOMに加えてrHA最終濃度0.5,1.0%(OA、NAT濃度それぞれ400-800μMとし、1細胞期マウス胚を培養した。 96時間の培養後、0.5%rHA/400μM OA・NAT添加群、および1.0%rHA/800μM OA・NAT添加群の胚盤胞発生率はそれぞれ93%、43%であった。一方、0.5%rHA/400μM NAT添加群、および1.0%rHA/800μM NAT添加群の胚盤胞発生率はそれぞれ80%、57%であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ヒト体外受精で使用されているアルブミン濃度0.5-1.0%(w/v)と同程度のアルブミンを添加してマウス胚を培養する系を構成するため、アルブミンにOAを加えただけでは不十分であり、OAとNATの双方を加えてかつ、添加後に加熱することが必要である。ところが、成書には明確な記載がなく、ヒト血清アルブミンを調整している企業に問い合わせてもどの企業もその調整法は企業秘密であり、外部に説明することはできないとのことで、この調整法確立に時間がかかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までの検討でようやくOA,NATを400μM加えてもrHA濃度0.5%であれば胚盤胞への発生率を低下させることなく培養可能であることが明らかになった。今後、0.5%濃度で、NAT濃度を変えずにOA濃度を変化させて加熱滅菌後のアルブミン添加培養液での発生実験を行い、一定の培養成績が得られたところで移植実験へ進む予定である
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次年度使用額が生じた理由 |
上記の通り、0.5%以上の濃度での培養計画率に時間がかかった。そのため、移植実験、およびその後の遺伝子解析は行うことができず、これに充てた予算は執行できなかったため、次年度への繰り越しが生じた。
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