研究課題
本研究は、染色体数的異常胚の出現に影響する暴露要因を解明するために、廃棄する胚盤胞から生検した試料を網羅的染色体解析(PGT-A)して 正倍数体胚、染色体数的異常胚、モザイク胚の出現率を算出し、様々な要因(卵巣刺激方法、 採卵方法、生検方法、治療歴、臨床的背景など)との因果関係を調査している。2020年度は、一部の共同研究施設とは小規模で染色体数的異常胚と暴露要因の解析を進めた。その結果、タイムラプスモニタリングによって検出される初期分割不良は、胚盤胞到達後の正倍数率を低下させないことが示された。また、PGT-Aの解析において、モザイクと判定されるコピー数変化の多くがノイズである可能性が示唆された。ノイズとモザイクを誤判定すると、染色体数的異常胚の出現に影響する暴露要因の解明にも影響すると考えられるため、ノイズの要因を検討した。ノイズの要因として、解析する細胞数が少ないと、全ゲノム成功率が低くなり、ノイズが高くなるという傾向が示された。また、断片化したDNAを鋳型とすると、ノイズが高くなる傾向がある事が示され、アポトーシスを起こしている細胞を解析すると、ノイズが高い結果になる可能性が示唆された。さらに、医療機関によってノイズ発生頻度に明確な違いが見られることから、TE生検の品質がノイズに影響する事が示された。本年度は、引き続き、ノイズの発生要因の解明と解決策の探索を進める。また、小規模の解析から染色体数的異常胚の出現に影響する事が示唆された暴露要因について、より大規模な多施設共同の症例対照研究を行うことで検証する予定である。
3: やや遅れている
解析環境の整備はほぼ完了し、一部の共同研究施設とは個別の解析が進んでいる。しかし、解析精度(ノイズとモザイクの判定)に改善が必要となり、ノイズの原因や解決方法の検証が生じたため、やや進捗が遅れている。
本年度は、ノイズの発生要因の解明と解決策の探索を進める。また、小規模の解析から染色体数的異常胚の出現に影響する事が示唆された暴露要因について、より大規模な多施設共同の症例対照研究を行うことで検証する予定である。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)
Cell Mol Immunol.
巻: - ページ: -
10.1038/s41423-020-0440-9
Hum Genet.
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