研究課題
昨年度は、卵巣におけるLRH-1の転写メカニズムを解析する研究を行った。ヒトLRH-1には、多様な組織特異的アイソフォームが存在しており、卵巣では、顆粒膜細胞において特異的なアイソフォームが非常に高レベルで発現している。しかしながら、その転写メカニズムの詳細は明らかにされていないことから、このアイソフォームの転写制御に重要なゲノム領域と転写因子の結合配列、さらには配列に結合する転写因子をヒト顆粒膜細胞由来のKGN細胞を用いて、レポーターアッセイにより調べた。顆粒膜細胞特異的なLRH-1を含む多様なヒトLRH-1アイソフォームをコードするゲノム部位周辺の領域をルシフェラーゼベクターに組み込んでKGN細胞にトトランスフェクションしたところ、顆粒膜細胞特異的LRH-1転写開始点より5'上流に数kb離れた領域にエンハンサー活性があることが分かった。この領域の配列を詳細に調べたところ、複数の核内受容体の結合配列が含まれていた。これらの結合配列に変異を導入したところ、エンハンサー活性は著しく低下した。よって、これらの配列に結合する転写因子が卵巣・顆粒膜細胞におけるLRH-1の転写を制御することが明らかになった。これらの配列に結合する転写因子は、KGN細胞のみならず、ヒト卵巣・顆粒膜細胞にも非常に高いレベルで発現をしていた。そこで、この核内受容体のアンタゴニストをKGN細胞の培養液に添加したところLRH-1の発現は低下したことから、この転写因子が顆粒膜細胞におけるLRH-1の転写を制御していることが強く示唆された。
2: おおむね順調に進展している
KGN細胞を用いたレポーターアッセイにより当初の目標としていた顆粒膜細胞特異的なLRH-1アイソフォームの転写制御に関わるゲノム領域を決定し、その領域に結合して転写を制御する転写因子の候補を同定したことから、今年度の目標は十分に達成していると考えられる。
昨年度、同定した顆粒膜細胞特異的なLRH-1アイソフォームの発現を制御する転写因子が、LRH-1の発現に必須であることを証明する。このために、転写因子のアクチベーターをヒト顆粒膜細胞由来のKGN細胞に添加してLRH-1の発現が実際に上昇するかを確かめる。また、KGN細胞において、この転写因子をノックダウンすることにより、LRH-1の発現が低下するかを確かめる。さらに、様々な間葉系幹細胞においてこの転写因子が発現しているかを調べる。転写因子の発現が確認された間葉系幹細胞には、転写因子のアクチベーターを添加することによりLRH-1の発現が誘導されるかを確かめる。LRH-1の発現が確認された場合には、培地にForskolinや8-br-cAMPを添加してLRH-1を活性化することによりステロイドホルモン産生細胞への分化誘導を試みる。
コロナウイルスの蔓延により、外注していた実験が延期となったため、今年度、再注文することとする。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 6件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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