研究課題/領域番号 |
19K09794
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
矢澤 隆志 旭川医科大学, 医学部, 講師 (00334813)
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研究分担者 |
谷口 隆信 旭川医科大学, 医学部, 教授 (60217130) [辞退]
加藤 剛志 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (60194833) [辞退]
宇和田 淳介 旭川医科大学, 医学部, 助教 (70580314)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | LRH-1 / ステロイドホルモン / 転写 |
研究実績の概要 |
前年度、ヒト・卵巣顆粒膜細胞腫由来のKGN細胞を用いて同定した顆粒膜細胞においてLRH-1の発現を制御する可能性が高い転写因子が、間葉系幹細胞において、LRH-1の発現を誘導し、ステロイドホルモン産生細胞に分化させるかを調べた。月経血由来の間葉系幹細胞であるEPC2細胞は、低いレベルながらも、この転写因子を発現している。そこで、この転写因子を活性化するために合成脂質リガンドを添加して24時間後に、qPCRにより遺伝子発現を調べたところLRH-1の発現が約10倍上昇していた。よって、この転写因子は、間葉系幹細胞においてもLRH-1の転写を制御しうることが証明された。また、合成脂質リガンドの添加は、細胞内のコレステロール輸送に関わるStAR遺伝子やステロイドホルモン産生酵素の一つであるHSD3B2遺伝子の発現を数倍誘導した。しかしながら、ステロイドホルモン産生の律速酵素であるCYP11A1の発現は、合成脂質リガンドの添加後も、ほとんど検出されなかったことから、培地中にステロイドホルモンの産生も検出できなかった。そこで、LRH-1の転写活性を上昇させることによりステロイドホルモン産生を上昇させるcAMPを培地に添加したところStAR遺伝子の発現は上昇したが、他の遺伝子の発現は変化せず培地中にステロイドホルモンは検出できなかった。よって、間葉系幹細胞をステロイドホルモン産生細胞に分化させるためには、今回同定した転写因子に加えて、他の転写因子が必要であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
間葉系幹細胞において、LRH-1の発現を誘導できたことから計画は概ね順調と言えるが、細胞がステロイドホルモンを産生しなかったことから、さらなる研究が必要と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
間葉系幹細胞に、さらなる転写因子の導入や活性化によりLRH-1の発現レベルをさらに上昇させることで、ステロイドホルモン産生細胞へと分化させる。このために、初年度に同定した顆粒膜細胞においてLRH-1の転写を制御する候補因子のうち、解析を行っていない4種類の卵巣における詳細な発現パターンをqPCRや免疫組織化学法により調べる。これにより、LRH-1の発現パターンと高い相関が見られた因子については、間葉系幹細胞における発現を調べる。これにより発現が確認された場合には、そのアクチベーターを培地に添加して、LRH-1の発現が上昇するかをqPCRにより調べる。間葉系幹細胞において発現が見られない場合には、レトロウイルスにより遺伝子導入を行うことでLRH-1の発現誘導を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
間葉系幹細胞にLRH-1を発現誘導させることはできたが、ステロイドホルモン産生細胞に分化させることはできなかったことから、さらなる研究を行うため今年度も研究を継続する。また、コロナ禍により現地開催の学会での研究成果発表を行うことができなかったことから、今年度は発表を行う予定である。
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