研究実績の概要 |
本研究では、間葉系幹細胞を含む多能性幹細胞において、転写因子であるLRH-1の発現誘導させることにより、顆粒膜細胞を含むステロイドホルモン産生細胞を分化誘導する新たな手法の確立を試みた。このため、まず初めに顆粒膜細胞におけるLRH-1の転写制御を詳細に調べた。過去の申請者らの研究により、顆粒膜細胞のLRH-1は、遺伝子の転写開始点5'近傍に存在するSP1サイト並びにSF-1/Ad4BP結合サイトが重要であることが示されている(Kawabe, Yazawa, 2013)。これらの配列に結合する転写因子のうち、SP1は各組織にubiquitousに発現している。一方のSF-1/Ad4BPは、比較的発現している組織は限られているものの、顆粒膜細胞以外のステロイド産生細胞にも発現している。そこで、遺伝子のさらなる重要な領域をヒト・顆粒膜細胞由来のKGN細胞を用いてレポーターアッセイにより調べた。すると、新たな核内受容体の結合配列を含む領域が顆粒膜細胞で比較的強く活性化されるエンハンサー領域を同定することできた。そこで、この領域に結合する転写因子を配列から予想して、KGN1細胞の核抽出タンパク質を用いてEMSAを行うことで明らかした。この転写因子は、HEK293細胞のようなLRH-1を発現していない細胞で過剰発現させたところ、LRH-1のエンハンサー活性を上昇させた。そこで、この転写因子をKGN細胞において発現させたところLRH-1の発現は、30倍程度上昇した。さらに、間葉系幹細胞に、この転写因子を発現させたところ、LRH-1の発現が弱いながらも誘導され、ステロイドホルモン産生酵素の発現が誘導された。また、この転写因子の合成リガンドにおいても、同じような結果を得ることができた。
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