研究課題/領域番号 |
19K09797
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
水本 泰成 金沢大学, 附属病院, 助教 (00420331)
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研究分担者 |
藤原 浩 金沢大学, 医学系, 教授 (30252456)
大黒 多希子 金沢大学, 学際科学実験センター, 教授 (30767249)
松岡 歩 金沢大学, 附属病院, 医員 (50579662)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 癌細胞集塊 / フィブリン網誘導 |
研究実績の概要 |
卵巣癌は早期より腹膜播種をきたす悪性腫瘍の一つであり、腹膜間質へ侵入する分子機構として、「腹膜上皮への接着とそれに引き続く上皮間葉転換が重要」とされている。今回これらの機序とは異なり、癌細胞集塊が自身の構造とそれが対峙する腹膜上皮の構造を保ったまま周囲にfibrin網が誘導され、それを足場に血管新生を伴う宿主の間質組織が形成されている像を観察した。そこで「癌細胞集塊は腹膜中皮に対峙した後、宿主の間質細胞に作用し、癌細胞集塊の周囲に腹膜組織と連続した間質組織を形成誘導することで癌細胞集塊の構造を保ったまま腹膜間質への浸潤を完遂する」という作業仮説をあげて、これを検証する目的で本研究を計画した。具体的には①臨床検体を用いた仮説を支持する分子の発現解析、②卵巣癌細胞株を用いた仮説を支持する分子の発現誘導因子のin vitro解析、および③マウス卵巣癌腹膜播種モデルを用いた仮説のin vivo解析を遂行して卵巣癌の新しい腹腔内播種性転移の分子機構を解明し、新規の治療法開発につながる知見を得ることを目指す。卵巣癌の腹膜播種転移機構に関する研究は、癌細胞の形質転換による播種能獲得に着目したものが多く、癌細胞そのものを治療の標的としている。また血管新生阻害など癌微小環境に着目した研究も行われているが、未だ腹膜播種に有効な治療法の実用化には至っていない。本研究はこれまでとは異なる観点から腹膜播種の機序の解明を進めていくものであり、本研究の作業仮説が立証された場合には新しい学説を提示すると同時に、fibrin網形成阻害など凝固系機序を標的とした新たな治療法を提言できる可能性を秘めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19感染拡大に伴い、研究環境に時間的、空間的、人員的の制限があるため、実験が遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19感染拡大に伴い、動物実験施設の使用制限があるため、当面は研究室におけるin vitro実験系を用いた実験を中心に研究を進める。 すでに臨床検体において、癌細胞の周囲に存在する癌間質細胞にVEGF-A発現が確認されており、また、赤血球を内包する微小血管の存在も確認されていることより、正常中皮細胞層を維持しながら、新生血管を誘導する現象が確認されている。また、癌細胞集会がフィブリン網に捕らえられた早い段階ではE-cadherin発現を伴う上皮様性格を持っているが、新生血管誘導路を介して、浸潤過程においてはN-cadherin発現が優位となり、間葉系性格の獲得を示唆する所見を確認しており、これらの解析を中心に今後の臨床検体を用いた研究は進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19感染拡大に伴い動物実験施設の使用制限が生じ、実施予定であった動物実験が滞ったために次年度使用額が生じた。次年度は後れを取り戻すべく、動物実験に当該経費を使用する予定である。
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