研究課題
1)羊水塞栓症の解析検体数:全国から送られた羊水塞栓症の臨床情報、血清・血漿、子宮・肺組織の解析。血液は症例数168例(207検体)、うち母体死亡10例。組織検体は15例で子宮のみ11例。子宮と肺と心筋3例、子宮染色済標本1例。2)心肺虚脱型羊水塞栓症の死亡例19例、救命例(心停止後)22例の臨床情報を収集。呼吸循環血液凝固機能の観点から解析する。3)心肺虚脱型羊水塞栓症肺組織検体による呼吸循環不全の病態解析:羊水塞栓症症例13例をコントロールとし肺血栓塞栓症5例の肺組織を用い従来当科染色方法(HE、アルシアンブルー、亜鉛コプロポルフィリン-1、C5a受容体染色など)に加えトリプターゼ、c-kit染色を行った。肥満細胞の局在と脱顆粒、C5a受容体の局在とその多寡について検討する。4)羊水塞栓症の子宮組織解析:羊水塞栓症でみられる重症子宮弛緩症は分娩後出血を惹起し心肺機能障害、血液凝固障害を増悪させる。止血のために摘出され補体受容体を発現した炎症細胞浸潤と間質浮腫(後産期子宮筋層炎)がみられた子宮組織の解析ではブラジキニン受容体B1Rを強く発現し浮腫増悪への関与が示唆された(Shen Y, Furuta-Isomura N, et al. J Obstet Gynaecol Res, 2019)。峡部でも同様のアナフィラクトイド反応が生じており出血の増悪に関与している可能性があることを示した(Jain D, Furuta-Isomura, et al. J Reprod Immunol, 2020)。5)DICに関する検討:羊水塞栓症発症早期の血液凝固検査値の検討、症例の血漿を用い線溶系パラメータを測定。著明な血液凝固障害と線溶亢進を認めた。消費性凝固障害の指標として発症時のヘモグロビン/フィブリノゲン比を考え早期の消費性凝固障害の検出と治療開始の基準を考案。現在論文投稿中。
2: おおむね順調に進展している
1)羊水塞栓症の血液、子宮・肺組織の解析検体数が確保された。2)心肺虚脱型羊水塞栓症の死亡例19例、救命例(心停止後)22例の臨床情報を収集している。3)心肺虚脱型羊水塞栓症の肺組織検体を使用した呼吸循環不全の病態解析:羊水塞栓症と診断された症例13例、コントロールとして肺血栓塞栓症5例の肺組織を用いて従来当科で行っている染色方法(HE、アルシアンブルー、亜鉛コプロポルフィリン-1、C5a受容体染色など)に加えて、トリプターゼ、c-kit染色を行った。肥満細胞の局在と脱顆粒、C5a受容体の局在とその多寡について検討する。4)羊水塞栓症の子宮組織解析を行った。Shen Y, Furuta-Isomura N, et al. J Obstet Gynaecol Res, 2019Jain D, Furuta-Isomura, et al. J Reprod Immunol, 20205)DICに関する検討を行った。現在論文投稿中である。(詳細は研究実績の概要にある。)
羊水塞栓症症例の臨床経過や行った治療を比較することで救命法の候補を検討する。症例肺組織において解剖学的にさまざまな気管支レベルでの肥満細胞の分布、補体受容体と肥満細胞脱顆粒の関連を評価するため、心肺虚脱型羊水塞栓症、肺血栓塞栓症、女悪念女性の病理解剖症例の肺を用いてc-kitによる免疫組織化学染色およびトリプターゼとC5a受容体の二重染色を行う。
前年度は計画より実支出額が少なく済んだため当該助成金が生じた。羊水塞栓症の動物実験モデルについてはいまだ適切なモデルは存在しておらず、次年度以降にこの検討を考えている。心配虚脱型羊水塞栓症の肺組織トリプターゼ染色の結果を考慮して全身麻酔下気管挿管したウサギなどの中型実験動物に肥満細胞脱顆粒がみられたものを経静脈投与、経器官投与し、バイタル変化、血中トリプターゼ、ヒスタミン、ヘパリン濃度の変化、全血を用いてROTEMで血液凝固系・線溶系の変化、血漿中のフィブリノーゲン、Tissue factor、PIC、肺組織で気管支・動脈の肥満細胞脱顆粒と補体受容体の発現を評価する予定である。また、肥満細胞脱顆粒がみられた系においてこれを抑制するアドレナリンや補体経路を抑制するC1インヒビターの経静脈投与、経気管投与を行い、バイタルや肺組織の変化が改善するか検討する予定である。
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