研究課題/領域番号 |
19K09801
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
千草 義継 京都大学, 医学研究科, 助教 (80779158)
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研究分担者 |
近藤 英治 京都大学, 医学研究科, 准教授 (10544950)
最上 晴太 京都大学, 医学研究科, 助教 (40378766)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 早産 / 羊膜 / TLR4 |
研究実績の概要 |
早産は新生児死亡、後遺症の重要な原因であり、早産の予防・治療は周産期医学領域における喫緊の課題である。腟分泌物中のfetal fibronectin(fFN)は早産マーカーであるが、fFN中に含まれるExtra domain A (EDA)が、ヒト羊膜間葉細胞に存在するToll-like receptor 4(TLR4)-MD2と相互作用し、COX-2、サイトカイン、MMPの産生を促進することで早産が惹起される。そこで、本研究ではEDA-TLR4-MD2相互作用に必須の結合部位(アミノ酸残基)を特定し、その部位を改変した変異EDAを作成する。さらにその変異EDAが、ヒト羊膜間葉細胞において、TLR4-MD2の活性化を阻害することで、炎症(子宮頸管熟化・子宮収縮)およびコラーゲン分解(羊膜破綻)を抑制し、早産治療に資するか否かの効果判定を行うことを目的として開始した。 まず、大腸菌によるリコンビナントEDAを作成した。このwild type EDAを構成する90のアミノ酸配列を4分割し、それぞれのアミノ酸を欠失した欠失EDAを作成し、それぞれのEDAがTLR4-MD2との相互作用を持つかどうかを、HEK-blue-hTLR4 cellsを用いて検討した。その結果、特定の7つのアミノ酸を欠失させたEDAがTLR4と相互しないことが判明した。つまり、EDA-TLR4-MD2相互作用には、わずか7アミノ酸だけで十分であった。しかも、その7つのアミノ酸のうちの1つ、Tyrosine36を変異させたとき、EDAはTRL4と相互作用しなかった。すなわち、EDAの90のアミノ酸のうち、Tyrosine36こそがTLR4との相互作用に必須であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
90のアミノ酸からなるEDAのうち、TLR4-MD2との相互作用に必須の部位は、系統的な欠失EDAの作成によって、7個のアミノ酸残基のみがこれに必須であることまで絞りこめた。しかも、そのアミノ酸残基をそれぞれ変異させてTLR4との反応をみたところ、Thyrosine36を変異させたときのみ、EDAはTLR4と相互作用しなかった。すなわち、EDA-TLR4-MD2の相互作用には、Thyrosine36のみが必須であることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
まず、Tyrosine36(Y36)を変異させたEDA(TLR4を刺激しない)を羊膜間葉細胞に添加(pretreat)し、そこにwild typeEDAを添加培養したときに、TLR4シグナリングがブロックされているかどうかをCOX2、IL8、MMP1などのmRNA発現によって判定する。さらに、Y36を変異させてその前後のアミノ酸30程度をつけたおとりEDA(Decoy)ペプチドを作成する。このペプチドを同様に培養実験に供し、wild typeEDAによるTLR4シグナリングをブロックするかどうかを判定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該金額では必要試薬の購入が難しく、次年度予算と併せて必要試薬購入予定として繰越した。
次年度予算と併せて試薬購入費に充当する。
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