早産は新生児死亡、後遺症の重要な原因であり、早産の予防・治療は周産期医学領域における喫緊の課題である。腟分泌物中のfetal fibronectin(fFN)は早産マーカーであるが、fFN中に含まれるExtra domain A (EDA)が、ヒト羊膜間葉細胞に存在するToll-like receptor 4(TLR4)-MD2と相互作用し、COX-2、サイトカイン、MMPの産生を促進することで早産が惹起される。そこで、本研究ではEDA-TLR4-MD2相互作用に必須の結合部位(アミノ酸残基)を特定し、その部位を改変した変異EDAを作成する。さらにその変異EDAが、ヒト羊膜間葉細胞において、TLR4-MD2の活性化を阻害することで、炎症(子宮頸管熟化・子宮収縮)およびコラーゲン分解(羊膜破綻)を抑制し、早産治療に資するか否かの効果判定を行うことを目的として開始した。まず、大腸菌によるリコンビナントEDAを作成した。このwild type EDAを構成する90のアミノ酸配列を4分割し、それぞれのアミノ酸を欠失した欠失EDAを作成し、それぞれのEDAがTLR4-MD2との相互作用を持つかどうかを、HEK-blue-hTLR4 cellsを用いて検討した。その結果、特定の7つのアミノ酸を欠失させたEDAがTLR4と相互しないことが判明した。つまり、EDA-TLR4-MD2相互作用には、わずか7アミノ酸だけで十分であった。しかも、その7つのアミノ酸のうちの1つ、Tyrosine36を変異させたとき、EDAはTRL4と相互作用しなかった。すなわち、EDAの90のアミノ酸のうち、Tyrosine36こそがTLR4との相互作用に必須であることが判明した。そこで、Tyrosine36のみを変異させた30アミノ酸からなるdecoyを作成した。decoyはEDA-TLR4相互作用を阻害した。
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