研究課題
HOXC8について、子宮内膜間質細胞での強制発現による細胞機能の変化の検討を継続した。HOXC8を強制発現させるためのベクターにはpGL3ベクターを用いた。作成したベクターを用いて、HOXC8を子宮内膜間質細胞で強制発現させ、HOXC8が実際に発現亢進しているかについて、抗HOXC8抗体(Rabbit, monoclonal antibody)を用いたウエスタンブロット法で確認した。次に、HOXC8強制発現ベクターを導入して48時間後に細胞増殖能・遊走能(細胞増殖アッセイ、創傷治癒アッセイ)、細胞接着・収縮能の解析(3D gel contraction assay)を行い、細胞接着能・線維化能が亢進することを確認した。マクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析を行い、HOXC8によって子宮内膜間質細胞でTGFベータ経路に関連する遺伝子が活性化されることを明らかにした。子宮内膜症では、細胞増殖・遊走能、接着・線維化能が亢進していて、それらはTGFベータ経路の亢進によって引き起こされていることが報告されている。HOXC8の強制発現により子宮内膜間質細胞でこれらの細胞機能が亢進したことから、HOXC8がTGFベータ経路を亢進させてこれらの細胞機能を亢進させている可能性があると考えた。そこで、TGFベータ経路の活性化マーカーであるリン酸化SMAD2/3がHOXC8の強制発現によって増加するかについて検討したところ、HOXC8の強制発現によりリン酸化SMAD2/3が増加することがわかった。つまり、HOXC8がTGFベータ経路を活性化させることが証明された。
2: おおむね順調に進展している
HOXC8の強制発現によって引き起こされる子宮内膜間質細胞での変化の解析は順調に進んでいる。現在、HOXC8がTGFベータ経路の活性化を介して細胞機能を変化させている可能性があると考え、更に研究を進めている。研究は順調に進んでおり、進行に問題はない。
今後は、HOXC8がTGFベータ経路の活性化を介して細胞増殖・遊走能、接着・線維化を引き起こしていることを証明する。HOXC8によりTGFベータ経路が活性化されることは既に証明している。HOXC8により引き起こされる各種細胞機能の亢進がTGFベータの活性化を介していることを証明するため、TGFベータ経路の阻害薬を用いた実験を行う。TGFベータ経路阻害薬の添加により、HOXC8による細胞機能の亢進が生じなくなれば、HOXCによる細胞機能の亢進はTGFベータ経路を介していることが証明できる。
研究成果を報告する機会が少なかったため、次年度使用額が生じた。研究成果は纏まりつつあり、次年度は各種国内学会、国際学会で成果報告を行う。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
巻: 105 ページ: e4474-4489
10.1210/clinem/dgaa618