子宮内膜症細胞と正常子宮内膜細胞の網羅的遺伝子発現解析の結果について、バイオインフォマティック解析を行い、子宮内膜症のマスターレギュレータ遺伝子としてHOXC8を抽出した。HOXC8が子宮内膜症細胞の有する特徴を再現できることを証明するため、HOXC8の強制発現による細胞機能の変化について検討した。pGL3ベクターを用いて、HOXC8の強制発現ベクターを作成した。作成には、cDNAライブラリを作成した後に、HOXC8のmRNA全長をPCRにて増幅してベクターに挿入した。このベクターを用いて、子宮内膜間質細胞で強制発現実験を行い、子宮内膜症細胞に特徴的な細胞機能や遺伝子発現プロファイルが誘導されること示してきた。また、HOXC8を強制発現させた子宮内膜間質細胞で網羅的発現解析を行い、HOXC8によって、TGFベータ経路に関連する遺伝子が活性化されていることを証明した。これまで、子宮内膜症では、TGFベータ経路の亢進によって細胞増殖・遊走・接着・線維化能が更新していることが報告されている。HOXC8がTGFベータ経路を更新させている可能性があると考えれることから、TGFベータ経路の活性化マーカーであるリン酸化SMAD2/3を調べたところ、HOXC8によりSMAD2/3が増加することがわかった。子宮内膜症の主たる特徴である線維化能について、3D gel contraction assayにおいてTGFベータ経路の阻害薬であるALK5インヒビターを添加したところ、HOXC8による線維化能が有意に抑制されることを証明した。一連の実験により、HOXC8が子宮内膜症細胞で認める特徴的な細胞機能や遺伝子発現を実際に誘導することを証明した。
|