研究課題/領域番号 |
19K09807
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
三宅 将生 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (00381385)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 膜電位 / 卵細胞 / 胚 / 生殖医療 / 体外受精 / 胚盤胞 |
研究実績の概要 |
今年度も引き続き、4週齢のマウスから卵を採取し、媒精後、その発生過程における胚の電位測定を実施した。卵への電極刺入時の電位測定においては、針先が透明帯を貫通する際に一旦マイナスの電位を示し、その後深く刺入したのちにはプラスを示すという、二相性が特徴であることを示した。 また、「2細胞期においてゼロに近い膜電位を示した胚(ゼロ電位胚)は胚盤胞への到達確率が低い」という前年度の結果を踏まえ、2細胞期胚をガラス化法にて瞬間凍結し、融解後の電位と発生イベントの関係を調査した。その結果、通常電位胚では4細胞期胚に75%(融解後24時間後)、胚盤胞には30%(同80時間後)が到達したのに対し、ゼロ電位胚ではそれぞれ30%、6%であった。すなわち、凍結融解に起因する胚への膜障害が発生に影響を及ぼしており、その障害の有無を膜電位の観点から検出することでアウトカム予測につなげられることを示唆した。一方で、凍結融解後の未受精卵に対するアウトカム予測を見出すことはできなかった。 さらに、測定時の侵襲度低減を主な目的として微小ガラス針電極の形態を改良した。剛性が高い直線針電極は浅く刺入するだけで測定が可能で、胚盤胞への到達確率も高く、侵襲度としては低いと思われた。しかし一方で、二相性の電位測定は観察されにくく、刺入が相対的に難しいことがわかった。 なお、これら上記の内容は主に日本生理学会年次大会にて発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動物実験の実施が困難になっているため、当初予定の分子生物学的実験の代わりに胚へ障害を与える、凍結融解の影響を優先して実行した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は発生イベントと膜電位の関係のほかに、ゼロ電位胚と通常電位胚との間での発現解析を行う予定である。可能であれば、採卵を多数行ったうえでマイクロアレイなどを用いた網羅的な解析を行い、どのような違いがあるのかを明らかにしたいと考えている。
また、高すぎても低すぎても良くない、といった、発生に最も適した胚の膜電位のレベルを明らかにすることができるか、という観点から解析を進めたい。リソソーム酵素やミトコンドリアDNAのコピー数解析などを並行して行って、その原因を明らかにしたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスだけでなく、2021年に発生した震度6の地震の影響で実験動物施設に被害が発生し、同施設を利用した新規の実験が思うようにできなくなっている。そのため新規採卵を避け、当初予定の分子生物学的実験の代わりに胚へ障害を与える実験である、凍結融解の影響を優先して実行した。また、当初科研費で支弁する予定だった、消耗品等の物品費を、受け入れ共同研究費で賄うことができた。そのため、当年度の使用額は少なくなっている。次年度ではこれを活用し、当初の計画からさらに進んで遺伝子発現の網羅的解析に利用したいと考えている。
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