研究課題/領域番号 |
19K09811
|
研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
李 忠連 東京医科大学, 医学部, 准教授 (80319532)
|
研究分担者 |
伊藤 正裕 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (00232471)
表原 拓也 東京医科大学, 医学部, 講師 (40800545)
永堀 健太 東京医科大学, 医学部, 助教 (50759561)
宮宗 秀伸 東京医科大学, 医学部, 講師 (80422252)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | エストロゲン受容体α / Estrogen receptor α / 子宮内膜 / Endometrium / 細胞サイズ / Cell size / ミトコンドリア / Mitochondria |
研究実績の概要 |
本研究では子宮内膜癌細胞において、局在の異なるエストロゲン受容体α(estrogen receptor α, ERα)が細胞サイズを制御する分子機序の解析を目的としている。 研究代表者は、ERαを発現していない子宮内膜癌細胞株(Ishikawa株)にERα強制発現ベクターを恒久的に導入することによって、①細胞膜(細胞膜型ERα)、②細胞質(細胞質型ERα)、③細胞質と細胞核(細胞質核型ERα)、④細胞膜、細胞質、および細胞核(野生型ERα)に、それぞれERαを発現する細胞株を作成した。 当該年度は、細胞質核型ERαを持つ細胞株における、エストロゲン(E2)および、選択的エストロゲン受容体モジュレーターであるバゼドキシフェン(BDF)を添加し、細胞の増殖能、遊走能ならびに各種シグナルパスウェイ上のタンパク質の発現量およびリン酸化レベルについて解析を行った。 細胞質核型ERα細胞では、E2添加により細胞の増殖能と遊走能は亢進し、逆にBDF添加により細胞の増殖能が抑制されることが確認された。一方、ERα-細胞において、E2やBDF添加によるこれらの変化は認められなかった。さらに、増殖能および遊走能に関わるシグナルパスウェイ上のタンパク質の発現量およびリン酸化レベルをウエスタンブロット法によって解析した。細胞質核型ERα細胞とERα-細胞において、非リン酸化mTORの発現量に変化は見られなかった。しかしながら、細胞質核型ERα細胞においてE2添加により、リン酸化mTOR(Ser2448)の発現量の増加や、リン酸化FAK(Try297)の発現量の低下が認められた。 以上の結果より、細胞質と核内に局在するERαを介したリン酸化mTORの発現量の増加が、細胞の増殖と遊走の亢進に関与すると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、上記①~④の細胞株を用いて、研究を遂行している。上述のように、現在までの研究は、概ね予定通り進行している状態にある。
|
今後の研究の推進方策 |
エストロゲン(E2)は、その受容体と結合することにより細胞サイズの変動に関わることが明らかになっている。 まず各細胞株について、エストロゲン(E2)とその阻害剤の添加を行う。これによって、細胞サイズの亢進を生じるエストロゲン(E2)の添加条件を決定する。その上で、そのようなエストロゲン(E2)による刺激下において、各細胞株間における「細胞サイズの変動」と「ERαの細胞内局在」の関係を評価する。解析において、まず細胞内タンパク質合成とミトコンドリアの活性に関わる遺伝子を同定する。次に、変化の認められた遺伝子群に対するshRNA(small hairpin RNA)ベクターを作成する。細胞への導入を行うことで、RNA干渉によって標的遺伝子をサイレンシングする。さらに、細胞サイズを中心に、ミトコンドリア膜電位、ミトコンドリア融合/分裂率、細胞内ATP量、新生タンパク質の発現量を測定する。これによって、ERαを通じたミトコンドリアの活性変動、および細胞サイズの変動に必要な遺伝子群を同定する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
オンラインでの学会発表があったため
|