研究課題/領域番号 |
19K09812
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
佐藤 美紀子 日本大学, 医学部, 准教授 (70326049)
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研究分担者 |
浅野 涼子 横浜市立大学, 医学研究科, 助教 (70806471)
宮城 洋平 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), 臨床研究所, 所長 (00254194)
羽尾 裕之 日本大学, 医学部, 教授 (40393243)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 子宮筋腫 / エリスロポエチン |
研究実績の概要 |
我々はこれまでに一部の子宮平滑筋腫(筋腫)でErythropoietin (EPO)が高発現していること,EPO高発現の筋腫は低発現の筋腫に対して腫瘍径が大きく,腫瘍内血管成熟が亢進していることから,EPOが腫瘍内血管の成熟を促し血流量を保持することで腫瘍増大に寄与している可能性があること(Asano R, Asai-Sato M. et al, Am J Obstet Gynecol. 2015;213(2)199.e1-8.),さらにはEPO発現が高い子宮筋腫は(Mediator Complex Subunit 12:MED12) 野生型であり,MED12野生型の子宮筋腫はエストロゲンに反応し、EPO発現を亢進させること(Asano R, Asai-Sato M. et al, Fertil Steril. 2019;111(1)178-185)を報告している。本研究では子宮筋腫がEPOを発現する機序とその作用について検証することを目的としている. <2020年度研究実績の概要>これまでに収集した子宮筋腫114例に加え,新たに約60例の子宮筋腫組織および画像・臨床データを追加して検討を行った。EPO高発現の子宮筋腫はMED12野生型であったことから,MED12変異以外の遺伝子異常(HMGA高発現とCUX1遺伝子の抑制)との関連を評価し,既知の遺伝子異常がEPO発現に関与しているか,また,分子遺伝学的背景が異なる筋腫の分子生物学的および臨床的特徴について検証を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
子宮筋腫のdriver geneの一つであるHigh mobility group AT-hook (HMGA)1, 2mRNA過剰発現はEPO高発現と相反しており,EPO高発現筋腫はHMGA遺伝子異常とは別の機序で発生・発育しているものと考えられた。そこで筋腫をMED12遺伝子変異群,EPO高発現群,HMGA高発現群にサブタイプ分類し解析すると各サブタイプにより腫瘍の大きさなどの臨床的特徴,血管新生・血管成熟因子の発現様式に特徴があることが示された。 また,一部の子宮筋腫では7番染色体短腕に異常があることが報告されており欠失したCut like Homeobox 1(CUX1)遺伝子が筋腫発生に関与していることが報告されている。7番染色体短腕はEPO遺伝子存在部位でもあることから,CUX1とEPO mRNA発現量の差異について検証したところ,EPO高発現筋腫では有意にCUX1発現が減少していることが示され,CUX1遺伝子欠失に伴うtumorgenesisの結果子宮筋腫の異常なEPO分泌とそれに伴う腫瘤増大に関与している可能性が考えられる。 2020年度の新型コロナウィルス感染防止対策に伴い,実験のための外出や共同研究施設への訪問が制限されたため実験計画には若干の遅れを伴った。
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今後の研究の推進方策 |
子宮筋腫のdriver geneの一つであるHigh mobility group AT-hook (HMGA)1, 2mRNA過剰発現はEPO高発現と相反しており,EPO高発現筋腫はHMGA遺伝子異常とは別の機序で発生・発育しているものと考えられた。そこで筋腫をMED12遺伝子変異群,EPO高発現群,HMGA高発現群にサブタイプ分類し解析すると各サブタイプにより腫瘍の大きさなどの臨床的特徴,血管新生・血管成熟因子の発現様式に特徴があることが示された。 また,一部の子宮筋腫では7番染色体短腕に異常があることが報告されており欠失したCut like Homeobox 1(CUX1)遺伝子が筋腫発生に関与していることが報告されている。7番染色体短腕はEPO遺伝子存在部位でもあることから,CUX1とEPO mRNA発現量の差異について検証したところ,EPO高発現筋腫では有意にCUX1発現が減少していることが示され,CUX1遺伝子欠失に伴うtumorgenesisの結果子宮筋腫の異常なEPO分泌とそれに伴う腫瘤増大に関与している可能性が考えられる。 2020年度の新型コロナウィルス感染防止対策に伴い,実験のための外出や共同研究施設への訪問が制限されたため実験計画には若干の遅れを伴った。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度の新型コロナウィルス感染防止対策に伴い,実験のための外出や共同研究施設への訪問が制限されたため実験は若干の遅れを伴った。そのため予定使用額全額を消費しなかったが、次年度は予定通り実験を進行し、最終的には全額の使用となる予定である。
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